「高齢者雇用が加速 70歳まで働ける企業が3割超に」 

【国内外の比較実例】

国・制度特徴高齢就業との接続示唆
フランス(CPF)個人学習口座。学習ポイントを可視化職務・賃金と資格が連携学びの所有権を個人に
ドイツ(IHK/HWK)商工会議所による職業資格の標準化熟練の外部評価で流通性高い第三者評価の信頼性
シンガポール(SkillsFuture)国家主導のマイクロ資格と助成40代以上の受講率が高い短期モジュールの効果
日本(現状)企業内OJT中心、外部資格の統合弱い就業率は高いが学習の連動が薄い相互承認と賃金連結が課題

「評価の外部化」は、70歳就業を“安価な延長線”にしないための必要条件である。学びが賃金と移動可能性に変換されてこそ、長い就業は持続可能となる。

日本の現場への翻訳

日本で同様の仕組みを実装するためには、既存の技能検定、業界団体の認定、大学の履修証明、民間のマイクロ・クレデンシャルを「相互承認」するハブが必要だ。学びの履歴(Learning Record)を個人IDと結び、プライバシーに配慮しながら企業間・自治体間で移転可能にする。これにより、中高年の学び直しが「賃金」「職務」「働く時間」の選択と直結する。企業は投資対効果を測りやすくなり、個人は学習への期待価値を正しく見積もれる。

政策提言:数値に基づく社会設計 短期(1〜2年):可視化とショートモジュール

🔧 政策の方向性

まず、学びの標準化を進める。
厚労省・文科省・経産省が合同で「中高年マイクロ・クレデンシャル標準」(学習10〜40時間)を策定し、レベル・到達目標・評価方法を明確にする。

一方で、学びのアクセスも整える。
ハローワークと自治体の学習ポータルを統合し、学習機会・費用・奨学金をワンストップで表示する。

さらに、企業向けには「70歳就業の質KPI」テンプレートを配布し、
参加率/資格取得/職務再設計件数/賃金反映率/離職率を可視化する。

最後に、安全・健康・IT基礎の3科目を必修化し、受講費の1/2を助成(55歳以上)することで、質の底上げを図る。

中期(3〜5年):相互承認と賃金連結

🌐 次の施策ポイント(簡潔版)

まず、個人学習の可視化とインセンティブを強化。
年間上限ポイントを付与する「個人学習口座」を創設し、使用履歴を確認可能に。企業拠出分は税額控除の対象とする。

一方で、産業別で技能と賃金を連動させる。
産業別の労使と連携し、技能手当・職務給・短時間正社員枠にマイクロ資格を紐づける労使協定モデルを提示する。

さらに、データで効果検証も進める。
産学官で「技能信用スコア」(資格×職務×評価×安全)APIを整備し、匿名化データでEBPMによる助成効果を標準化する。

最後に、地域ハブで技能評価の効率化。
地方大学・高専・公設試を拠点に、技能検定の実技評価をマルチサイト化し、移動コストを削減する。

長期(5〜10年):学びと働きの循環設計

🌍 次の施策(簡潔版)

まず、職業能力評価の統合を進める。
国家資格フレームに統合し、学校教育・企業内訓練・地域講座・オンラインプログラム間で単位互換を可能にする。

一方で、年金と就労調整の見直しも行う。
就労収入の上限・減額制度を段階的に滑らかにし、学習投資に対する税控除を拡充する。

さらに、公共データの連携を強化。
教育履歴・雇用履歴・安全衛生・医療統計を突合し、政策評価の因果推定を高度化する。

最後に、国際相互承認の活用。
海外のマイクロ資格も利用可能にし、技能の越境性が人材の越境性を支える。

「量の3割」から「質の3割」へ。指標と仕組みを変えれば、数字の意味は変わる。

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