
選ばれる企業は物語を語る 中小企業ブランディングを支えるPRの力
現状分析:中小企業が抱えるブランドの課題
課題は三層に分かれる。まず第一に「理念の曖昧さ」。何のために存在するのかが、経営陣の頭の中にしかなく、言葉になっていない。つぎに第二に「言葉の断片化」。営業は機能を語り、採用は雰囲気を語り、工場は品質を語り、社長は歴史を語る。このように、バラバラの正しさは、全体としての不信に転化する。さらに第三に「行動の非連続」がある。広告は出すが顧客体験は変えない、採用を増やすがオンボーディングを整えない、危機が起きてから慌てて火消しする。つまり、ブランドは、理念・言葉・行動の三点が連動する時、初めて社会の約束になる。
「メディア掲載は増えたのに、商談が増えない。何かがズレている気がする」
地方製造業・A社長
ズレの正体は「誰に」「何を」「どう約束するか」の不一致だ。PRのKPIを露出やエンゲージメントに置くのは悪くないが、本質は「意図した評判を、意図した市場で、意図した速度で、意図した行動に結びつける」こと。そのためには、メディア戦略と併走して「社内の語り」を整えねばならない。社長広報が重要になるのはここだ。社長が“何を捨てるか”まで含めて語る時、組織は初めて決められる。危機対応も同じ構造で、平時の言葉と行動が非連続だと、炎上時に説明が破綻する。つまり、危機は突然に見えて、その多くは「語りの欠陥」が育てた慢性疾患だ。
そして今、生成AIが課題を可視化する。社内メールや議事録、営業資料の言語をAIで解析すれば、会社の“語彙の地図”が出る。最頻語、避ける言葉、現場の美徳。ここから理念の核を掘り起こせる。さらに、業界ニュースのトピックマップを作れば、自社が「語るべき領域」と「今は語らない領域」を整理できる。AIの社会的導入が進むほど、これらの分析は「みんなやっている」標準工程になる。だから焦る必要はない。ただし、やらない理由もない。
語られない価値は、存在しない価値と同義になる。だから、語ることは経営の仕事だ。















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