
「ゴールデン・グラブ賞」表彰式 初受賞の佐藤輝明が喜び語る
現状分析:努力の裏にある見えない物語
ゴールデン・グラブ賞は、ポジションごとに限られた枠しかない。外野こそ三枠あるが、内野は一枠。名誉を賭ける椅子取りゲームは、実力だけでは辿り着けない「継続」と「信頼」をも試される。日々の守備は放送席の熱狂の外側で進み、スコアに残るのは「失策」という細い文字だけ。成功は静かだ。静かだから見落とされがちだ。しかし、ベンチに戻る彼の背中の呼吸、練習後のグラブの手入れに流れる時間は、確実にチームの勝敗を左右する。
守備は、健康の管理が露骨に結果へ跳ね返るフェーズでもある。可動域、瞬発力、視力、バランス。スポーツ・健康産業の研究が進み、いまや選手は「育てる体」と「守る体」を同時に設計する時代にいる。ウェアラブルで睡眠を計測し、筋力よりもまずフォームを整え、柔軟性を土台に筋力を載せていく。僕が地域のスポーツ振興を担当していたとき、地方の少年団にも、理学療法士が定期的にアドバイスに入るようになった。怪我を減らすことは、挑戦の回数を増やすことと同義だ。
とはいえ、理屈だけでは届かない球がある。守備の「間」は、野球というスポーツが持つ独特の音楽的な要素だ。打球音の立ち上がりを聴き、風と回転を読む。打者の狙いを一瞬で外し、体を先に動かす。そこには、泥臭く身体に叩き込まれた反復と、薄い紙一枚ぶんの勘が並んでいる。これを身につけるには、結局のところ、時間がいる。時間は有限で、席もまた限られている。希少性の経済学は、スポーツの現場でも容赦がない。しかし、だからこそ、手に入れたときの価値は、胸の奥にずっと残る。
守備は嘘をつかない。毎日、自分と向き合った分だけ、土が教えてくれる。
現場で見た僕の実感
僕が印象に残っているのは、ある遠征先で見た、試合後の彼の横顔だ。みんなが帰ったあとの薄暗い室内練習場で、彼は短いノックを繰り返していた。コーチの掛け声もなく、ただ、打球を待ち、足を運び、呼吸を合わせる。靴底が床を擦るキュッという音が、規則正しく続く。それは誰にも見せる必要のない時間だ。けれど、その時間こそが、ゴールデン・グラブの金色に織り込まれている。
今日の光は、昨日の影を引き受けた人だけに差す。
| ポジション | 受賞枠 | 選考の概要 | 希少性メモ |
| 投手 | 各リーグ1 | 守備力・牽制・フィールディング | 投打兼備が要求される |
| 捕手 | 各リーグ1 | 捕球・送球・配球・ブロッキング | 総合力の競争が熾烈 |
| 一塁手 | 各リーグ1 | 捕球安定性・併殺関与 | 僅差で評価が分かれる |
| 二塁手 | 各リーグ1 | 守備範囲・連携・併殺 | 反応速度の勝負 |
| 三塁手 | 各リーグ1 | 打球速度対応・肩・前進守備 | 一席の重みが際立つ |
| 遊撃手 | 各リーグ1 | 広範囲カバー・強肩・判断 | 華と堅実の両立が必要 |
| 外野手 | 各リーグ3 | 打球判断・肩・守備範囲 | 実質「限られた三席」 |















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