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子の送迎、食事作り…「がんママ」と家族の孤独 集う場で見た10年

現実にある悩みのかたち

がんと子育ては、生活の同じテーブルに並ぶ二つの大皿のようなもの。どちらも生きるために欠かせず、互いに相手のスペースを尊重し合う必要があります。治療の副作用で体力が落ちる日、子どもの行事や送迎が重なると、時間は一気に薄く伸びてしまう。職場の理解があり、家族の調整ができる日もあれば、うまくいかない日もある。それでいい。大切なのは、あなたが「一人で全部は抱えていない」と感じられる時間を一日のどこかに確保することです。東京都内なら、区市町村のファミリーサポートセンター、学童保育、病児・病後児保育の併用で、送迎と預かりの隙間を埋める工夫ができます。

朝日新聞の記事は、この隙間がどれほど家族の孤独を深めるかを教えてくれました。送迎や食事づくりといった“当たり前”に見える家事が、治療の合間には険しい峠になる。集いの場が十年続いたのは、峠の手前で「いったん荷を下ろせる場所」が確かに必要だったからでしょう。ここで分かったのは、「制度の数」よりも「制度へたどり着くための手」を増やすことの大切さ。相談に行く勇気が出ない日には、近しい人の付き添いが力になります。支援者側にできることは、地図を示すだけでなく、道の最初の一歩を一緒に踏むこと。その一歩は、家族にとっては遠い峰に向かうためのロープの結び目になります。

責任感が強い人ほど、自分の疲れに気づきにくいことがあります。周囲に心配をかけたくない、子どもの前で笑っていたい、職場に迷惑をかけたくない。どれも尊い願いです。それでいい。けれど、長雨が続けば地面がゆるむように、心の地盤も静かに崩れていきます。心理学では、弱音を安全に吐き出せる場はストレスの緩衝材になるとされます。短い時間でいいから、誰かと「今日の私」を言葉にすること。五分の通話、三行の日記、玄関先の「助けて」の合図。がん相談支援センターやピアサポートは、弱音を受け止めるための設計がされています。強さは、抱え続けることで生まれるだけではありません。手放す勇気からも生まれます。

「一人じゃないと感じた瞬間、息ができた」

参加者の声

完璧じゃなくていい。雨の切れ間を一緒に探せばいい。

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