中学の部活動 “地域展開”で新ガイドライン案 国の有識者会議

ニュースが伝えたのは、方向性の明確化だった。国の有識者会議が、中学の部活動を“地域で展開”していくためのガイドライン案を示した。ここで重要なのは、何をなくすかではなく、何を増やすかだ。現場の息を途切れさせない仕組み。安全と学びの両立。地域との対話の回路。これらは誰かひとりの正論では動かない。現場の知恵と生活の事情が、ゆっくりと噛み合う必要がある。だからこそ、社会的証明が効いてくる。「みんながやっているから、自分たちもやれる」という感覚だ。

実際、いくつもの自治体で、放課後の練習を地域クラブと接続する試みが静かに回り始めている。学校の体育館と地域の運動施設を、週単位でパズルのように組み合わせる。民間のトレーニングジムが基礎体力講座を提供し、整骨院がセルフケアの教室を開く。送迎は地域の交通事業者がサポート。保護者会はカレンダーアプリで当番を可視化し、無理のない分担を実現する。誰かひとりが背負っていた重さを、みんなで少しずつ持ち合う。そうして見えてくるのは、「続けられる形」だ。

私が話を聞いたのは、海風の通る小さな町の体育館だった。汗に混じるわずかな潮の匂い。バスケットのドリブルと、柔道場の畳を拭く雑巾の音が交差する。顧問の先生は、「学校だけでは抱えきれないものがある」と静かに言った。地域のクラブ代表は、「だから一緒にやろう」と笑った。子どもたちの耳には、ただボールの弾む音しか届いていない。だがその背中を、何本もの見えない腕が支えている。これが、地域展開の核心だ。

「“部活が好き”という気持ちを、続けられる形で守りたい」

中学校顧問教員

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