
和歌山初の女性ラグビー審判員に「三刀流」の女子高生がデビュー
成功事例:あの日、彼らが掴んだ希望
試合は拮抗した。スクラムが軋むたび、彼女は角度を変え、背中の張りでラインアウトの反則を未然に防いでいく。前半終盤、密集からのボールアウトが遅れ、プレーが乱れかけた瞬間、短い笛が響いた。手をすばやく胸の前で示し、原因を明確に伝える。選手たちは頷き、すぐさま再開。テンポを崩さず、安全を優先するその所作に、私は「良いレフェリー」の条件を見た。冷静で、誠実で、ぶれない。名場面の陰には必ず、正しい判断がある。
「あの笛で、選手の顔つきが変わった。審判を信じれば、プレーに集中できる」
ある指導者の言葉
後半、ペナルティーからのクイックタップで一気に展開が広がる。彼女は一歩目で加速し、内側に切り込みながらオフサイドラインを管理した。サイドラインの観客から「ナイスコール」の声。笛がリズムを作れば、選手の足も音楽のように揃う。終盤の疲労が濃くなる時間帯、危険度の高まるタックルに目を凝らし、迷わずカードに手を添える姿は、プレイヤーファーストの体現そのものだった。
「希少だから、難しい。でも、少ないからこそ、響く」
笛が教えてくれる、挑戦の真理
彼女の「三刀流」は、競技の現場にいる者ほど理解できる。プレーヤーとしての身体感覚が、レフェリングに活きる。味方の疲労、相手の圧、モメンタムの移ろい。マネジメントの視点が、チームを支える行動に現れる。片付け、声かけ、連絡。どれも派手ではないが、現場の質を上げる要素だ。三本の刃は互いに研ぎ合う。一本の刃で切れない硬さに、別の刃が角度を変えて入っていく。だから三刀流は強い。
| 時間帯 | 役割の刃 | 具体行動 | 身につく力 |
|---|---|---|---|
| 朝 | 学ぶ刃 | 授業・ルール学習・フィットネス | 知識の精度・体力基盤 |
| 放課後 | 支える刃 | 部の準備・片付け・後輩への声かけ | 段取り力・信頼構築 |
| 夜 | 裁く刃 | 試合映像の振り返り・ケーススタディ | 判断の一貫性・自己省察 |
| 週末 | 裁く刃 | ゲームマネジメント実地・講習 | 場数・安全管理 |
この日、ピッチに立つ一人の背中が、チームの態度を良くし、観客の目線を変え、地域に新しい話題を生んだ。成功事例とは、勝敗の結果に限らない。挑戦の姿勢が周囲のふるまいを変えたとき、すでに成功は始まっている。和歌山初の女性審判デビューという“希少”の価値が、次の挑戦者の背中を押す。「自分もできるかもしれない」と思わせる火種が、確かに灯った。
















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