和歌山初の女性ラグビー審判員に「三刀流」の女子高生がデビュー

分析：チームと地域が生む相乗効果

競技の質を上げるのは、選手や監督だけではない。レフェリーの質が上がると、チームはルールを学び、プレーの安全性が高まり、スピードが増す。結果として観客の満足度が上がり、試合の価値が高まる。そこに地域のスポーツツーリズムが絡むと、経済効果も生まれる。安心して観戦できる大会、子どもを連れて行きたい会場、指導者や審判が学び合う交流の場。スポーツ・健康産業において、レフェリーは「見えない基盤」だ。見えない基盤に投資できる地域は、長い目で見て強くなる。

希少性の価値は二つある。一つは注目を集める力。もう一つは、育成の軸になる力だ。和歌山初の女性審判という事実は、メディアやSNSに載る時点でニュースになる。だが、それを一過性に終わらせないためには、育成の仕組みが必要だ。メンター制度、定期的なフィードバック会、映像解析の共有、異世代・異性のロールモデルとの接点づくり。地域のラグビー協会、学校、行政、企業が連携すれば、希少は標準へと滑らかに変わる。希少である間に注目を集め、注目があるうちに仕組みに落とす。これが相乗効果の設計図だ。

「レフェリーが育つと、街の“観る目”が育つ。観る目が育つと、選手も変わる」

地域スポーツ振興の現場で聞いた言葉

和歌山のスタジアム周辺には、地元のパン屋、果物の直売所、温泉施設がある。試合の日には、そこに人の流れが生まれる。スポーツの現場が良くなることは、地域の日常を少し豊かにする。レフェリー育成は、その豊かさの要だ。見えないけれど、確実に効く投資。だから私は、今回のニュースを「地域経済の芽」としても受け止めたい。