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睡眠を奪うー『寝汗』を見過ごさせないーー失う前に守る、総合診療の知恵

現場の声と見えない圧力

汗は恥、と結びつけられがちだ。教室で、会議室で、汗じみを気にして発言が減る。「この程度で受診するのは大げさ」と抑える声が、内なる合意をつくる。結果として、夜に干したパジャマが朝にはまだ湿っている現実を、誰にも語れない。沈黙は疲弊を呼ぶ。手のひらの冷たさがじわりと広がる夜、息を潜めてやり過ごす癖がつく。そんな小さな我慢が積み重なると、集中力の低下、欠勤、学習の遅れに至る。見えない圧力をほどくには、「話していい」「受診していい」という合図を、社会の側から示す必要がある。

家庭は気づく。いつもより洗濯物が増えた、寝室の窓がよく開いている。学校は気づきにくい。夏の制服の通気、体育後の汗の扱い、保健室の敷居の高さ。行政は季節の注意喚起をするが、個別の相談へつなぐ動線が弱い。企業は生産性低下を恐れて健康施策に投資するものの、睡眠症状の個別対応までは踏み込めない。齟齬は、責任の押しつけ合いを生むのではなく、役割分担の見直しで解ける。保健教育に睡眠と受診の目安を組み込み、自治体は相談窓口とクリニックの連絡を平時から整備し、企業は就業規則に「受診のための短時間休暇」を明記する。小さな整えが、放置の損失を削る。

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