
若手が辞める会社は“これ”をしていない──IT・ソフトウェア中小の定着設計と制度見直し
政策と現場のギャップ
制度疲労と実務負担
日本の雇用政策は、雇用維持と均衡処遇の両立を掲げていますが、IT・ソフトウェア産業の職務特性(急速な技術陳腐化、成果の非対称性、プロジェクト波動)に十分フィットしていない場面が多いです。各種助成金は有用である一方、事後書類の負担が重く、スキル標準も抽象度が高いため、現場の評価表に落とし込むことが難しいと感じる企業も多いのではないでしょうか。教育訓練給付の拡充自体は歓迎すべき方向ですが、対象講座の選定が「実務に資するかどうか」を評価する仕組みはまだ十分とは言えません。その結果、制度を使いこなせる企業と、制度を十分に活かしきれていない企業との格差が広がりやすい構造になっています。
中小企業の視点
中小企業は、単価交渉力が限られるなかで人件費と教育時間をひねり出さなければならないという制約を抱えています。そこに「短納期・低単価・高期待」という“三重苦”が重なると、制度を活用する余裕が奪われがちです。制度が紙ベースの実績や複雑なフォーム入力を求めるほど、貴重なマネージャーの時間が書類作成に吸い取られます。仮にマネージャー1人の「1時間=5万円相当の機会費用」と見積もると、10時間の書類対応で50万円の損失になります。政策サイドには、申請と評価のAPI化・標準化によって実務負担を下げる設計が強く求められます。その前提として、企業側はスキル定義と評価ロジックを機械判読可能な形で整備しておくことが重要です。
















この記事へのコメントはありません。