香川の“痩せウニ”で売上と海を守る──讃岐うどん雲丹に学ぶ社長の収益モデル

国際比較と改革の方向性

海外では、痩せウニ(生息域で藻場を食い荒らす個体)を回収し、蓄養して高付加価値化する取り組みが進んでいます。北欧や北米の一部では、除去を生態系回復政策と結びつけ、民間が給餌・蓄養で可食部を太らせ、プレミアム市場に供給するモデルが展開されています。これらは、公共財(藻場回復)と私財(商品収益)を両立させ、成果連動の民間資金を呼び込む点で参考になります。

日本でも複数地域で同様の試みが始まっており、品質規格・衛生基準・サプライチェーンの知見が蓄積されつつあります。香川はうどんという巨大な受け皿を持つため、「蓄養 → 加工 → 即時需要」という回転率の高いモデルを構築しやすい立場にあります。国際比較からの示唆は、制度の一体設計ブランド統治に集約されます。個別の成功事例を束ね、地域全体のデファクト基準をつくることが重要です。

改革の方向性として、日本の水産政策・食品政策・観光政策を横断する「地域アセット化」の視点が重要になります。藻場はインフラ、痩せウニはメンテナンスで出る副産物、うどんは需要の本線、観光は外貨獲得の装置、金融は回転を支える潤滑油です。この全体像を、香川を先行モデルとして制度化していくイメージです。

具体的には、藻場回復をブルーカーボンのクレジット化によって貨幣価値に変え、痩せウニ由来商品の売上と組み合わせて成果連動報酬を設計します。環境省が公表しているブルーカーボンの解説や、「里海づくり」の手引きなどは、制度設計の参考になります。観光は「食×保全」の体験(藻場見学・加工見学・限定メニュー)で客単価を引き上げ、うどん店は共通ディスプレイやQRコードでストーリーを伝えます。

こうすることで、個々の主体の損失回避(売上機会の逸失回避・ブランド毀損回避)が同じ方向に働くようになります。これは、中小企業の社長にとって、「事業を続けない方がリスクが高い」状態をつくる設計思想でもあります。

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