物価の風に聴く文化と補正予算——失いたくないものの輪郭

終章:共鳴としての文化

議場の木の匂い、メモ紙のざらつき、窓ガラスの冷たさ。そこで交わされる数字は、たしかに生活を温めるために積み上げられる。ニュースが伝えるのは「必要施策」という凛とした語だ。私はそこに、もうひとつの語を添えたい。呼吸。呼吸は不要不急ではない。誰かが最初に深く吸い込むと、隣の人が少しだけ楽に吸える。合唱がはじまる。不揃いの呼吸が、やがてひとつの音色に向かう。損失を避ける私たちの心理は、過剰な守りに傾きがちだけれど、守るものの中に静かな歌があると知るだけで、選ぶ手つきは変わる。私は願う。文化が、予算の欄外ではなく、欄内の余白として印字される日を。社会の温度が、色と音と匂いの重なりで調律される時を。そうでありたい。

数字の列の端に、呼吸の余白を。

付録:参考・出典

一次情報:

参考文献・資料:

  • World Health Organization, What is the evidence on the role of the arts in improving health and well-being? A scoping review. 2019.
  • 文化庁「文化芸術推進基本計画」各版(文化政策の背景整理に参照)
  • 美術手帖 各特集(芸術教育と地域文化の事例参照)

注記:本稿は報道に基づく一次情報を端緒に、芸術・教育・ジェンダーの観点から感性の質感を通して社会的文脈を読み解く詩的評論である。特定の政策決定を促す断定を避け、選択肢を質感の言葉で提示した。


要約:補正予算審議の報に接し、損失回避という心理を文化の呼吸に翻訳することで、芸術教育・女性表現者の歴史・地域文化の基盤を「失わない」選択肢として静かに可視化した。

提言(抄):文化の呼吸を測る小さな指標の整備、遅効性の支援ツールの設計、基盤の暗がりを守る小規模枠、資料の余白をひらく記述欄、見えなかった名前の回収と記録の更新。

https://news-everyday.net/(文・吉川 綾音)

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