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共通テスト志願者3年連続50万人割れ 教育と人材育成の土台を地域から立て直す

同調圧力

教室の隅で、問題集の角がわずかに丸くなっている。多くの手がそこをめくり、指の熱が紙に移った証だ。生徒は言う。「点数だけじゃないと言われるほど、何を示せばいいのか不安になる」。担任は返す。「学校推薦は責任が重い。だからこそ記録を丁寧に」。沈黙の合意がある。誰も大きな声で言わないが、評価の基準が揺れていると、心は疲れる。グループワークの最中、意見を飲み込む生徒がいる。ため息は薄く、だが確かにある。黒板を消す腕の筋肉に、わずかな重さが加わる。疲弊は、声にならない。

「点数だけじゃない」が武器にも盾にもならないとき、若者は沈黙に寄りかかる。

家庭は、安心できる指標を求める。進学費用の見通し、奨学金の条件、入学後の学びの質。家計の天気図は曇りがちで、無風の日を祈る。受験代・交通費・模試代、細かな出費が積み上がるほど、受験回避の意思が強まることもある。

学校は、学びの多様化を推進する。探究活動は深くなり、ポートフォリオは厚みを増す。だが、大学側へ翻訳する枠組みが足りないと、努力の記録は「物語」になり、比較可能性を失う。

行政は、制度の公平性と効率を同時に追う。制度改定のスパンは政治日程と連動し、学校の暦とずれる。企業は、実務に活きる能力と学位の価値を読み替えたいが、測る物差しが揺れると採用のリスクが増す。

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