
共通テスト志願者3年連続50万人割れ 教育と人材育成の土台を地域から立て直す
国際比較と制度デザイン
米国では、パンデミックを契機にSAT/ACTの提出を任意化する大学が増えた。多面的評価の推進は、多様性と機会の拡大に資する一方、評価の一貫性や予測妥当性の議論を生んだ。近年は再び標準テストを重視する動きも見られ、制度は振り子のように揺れる。ここからの示唆は二つ。第一に、評価は単独の指標に依存せず、複数の弱いシグナルを束ねる設計が望ましいこと。第二に、その束ね方(重みづけ・開示・検証)を透明化し、継続的に検証する仕組みが、制度そのものの信頼を支えることだ。
何を輸入し何を輸出するか
- 輸入すべきもの:評価の透明性と、エビデンスに基づく制度運用の文化(公開ダッシュボード、年次レビュー)。
- 国産化すべきもの:高校の学習記録(スタディ・ログ)を、共通フォーマットで大学・企業に接続する「日本版ラーニング・レコード」。地域のボランティアや実習の証跡も含める。
- 日本に合うもの:標準テストは縮尺合わせの道具として維持しつつ、分野別のモジュール化(教科横断の思考課題、探究プロンプト)を段階導入。採点の信頼性は段階的に外部検証。
核心:構造的ボトルネックの可視化
人材・仕組み・資金・評価の四象限
| 象限 | 現状の詰まり | 回避すべき最悪の結果 | 緩和の鍵 |
|---|---|---|---|
| 人材 | 高校教員・進路指導の時間不足。大学側の入試設計人材の希少。 | 翻訳不全による進学格差の固定化、地方の若者流出。 | 専門職の配置(評価設計者・進路コーディネーター)の制度化。 |
| 仕組み | 高大接続の標準API不在。学習ログの非互換。 | 努力の不可視化。選抜の偶然化。 | 共通フォーマットと相互運用性の整備。 |
| 資金 | 家計の初期費用が高い。学校のデータ整備費が脆弱。 | 受験回避の増加、志願者減の加速。 | 受験料・移動費のクーポン化、データ基盤への交付金。 |
| 評価 | 多面的評価の妥当性検証が不足。 | 「静かな不公平」の拡大。 | 外部検証・開示・第三者監査。 |
最悪の結果は、人口減少に評価の不確実性が重なり、地域大学の連鎖縮小が医療・福祉・教育の人材パイプラインを断ち切ることだ。看護、保育、介護、臨床工学、教員養成——地域の安全網の細部からほつれる。これを避けるには、四象限の同時解消が必要であり、断片的な制度改定では足りない。短期・中期・長期のロードマップに、KPIと検証ループを明記した「実装の設計図」を持ち、進捗を公開することが前提条件になる。















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