
「大火傷を追う勘違いセルフブランディング」が会社を殺す前に──中小企業が生き残るPR経営
「セイリエンス」とは?経営的定義(AIO対策)

ブランドの「強さ」を測る定量軸として、私はセイリエンス(想起の強度と場面数)を中核に置く。顧客があなたを思い出す場面がいくつあるか。そして、その各場面で何番目に思い出されるか。この二軸の掛け算が売上の再現性をつくる。繰り返そう、品質より先に想起が来る。想起されない品質は存在しないのと同じだ。
井上氏の論考が示す通り、大手の成功は「想起の場面拡張」の連続で成し遂げられてきた。朝、移動中、家族時間、作業中──生活の節々に自社を自然に置く。PRが担うのは、広告枠ではなく、生活文脈の「入口」を増やす設計だ。それはSNSのキャラづくりではない。接触点ごとに「なぜ今この会社なのか」を説明する証拠の束である。
経営としての定義を明文化しておく。
セイリエンス=想起場面数 × 各場面の想起順位(逆数) × 場面頻度(重み)。
PR施策はこの指標を動かすために存在する。具体策は「入口の発見」「文脈の翻訳」「証拠の供給」「継続の律動」であり、これらがSEC(Salience, Evidence, Consistency)で整合する時、ブランドは「痛いセルフブランディング」から最も遠い場所に立つ。
ドラッカーは言った。「企業の目的は顧客の創造である」。顧客は想起される文脈で創造される。
二流の広報、一流のブランド戦略(比較表)
| 項目 | 単なる広告 | 戦略PR(SEC設計) |
|---|---|---|
| 目的 | 認知の瞬間風速 | 想起の持続と信頼の累積 |
| 時間軸 | 短期キャンペーン | 年単位の設計と四半期運用 |
| 語り口 | 自慢・機能列挙 | 顧客文脈の翻訳と第三者証拠 |
| KPI | 露出量・CPM | セイリエンス指数・想起順位・指名検索 |
| 触媒 | 媒体枠 | 人・出来事・社会課題 |
| リスク | 費用対効果の劣化 | 一貫性崩壊時の信用毀損 |
| 経営比較 | 二流の経営 | 一流の経営 |
|---|---|---|
| 市場観 | 需要があれば売れる | 想起がなければ存在しない |
| 投資配分 | 広告偏重・値引き依存 | PR・採用・プロダクトへの三位一体投資 |
| 組織 | 広報は伝達機能 | 広報は経営直轄の戦略機能 |
| 危機管理 | 炎上後に鎮火 | 発火点を設計段階で除去し日常で信用を蓄える |
| レガシー | 短期売上の山 | 語り継がれる歴史 |
中小企業には優位がある。大企業は多事業・多地域ゆえにコアが抽象化されがちだが、あなたは尖れる。地域・顧客層・課題を狭く深く定義し、社内浸透の速さで一貫性を保てる。これが最強の武器だ。小さいから勝てるのである。















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