介護事業所の37%が赤字 現場の不安に向き合う|数字が苦手でもできるやさしい経営改善ロードマップ

現状と背景:何が起きているのか

厚生労働省の調査によると、介護保険サービスを提供する事業所の37%余が昨年度、赤字でした(出典:NHKニュース報道/厚生労働省資料)。人件費や物価の上昇、採用・定着の困難、光熱費と送迎コストの増加。これらが重なり、現場の努力だけでは吸収しきれない状況が続いています。数字は厳しく見えますが、視点を変えれば「改善の余地が見えた」合図でもあります。

介護保険サービス事業の“収支”とは?

収支は「入ってくるお金」と「出ていくお金」の流れです。介護事業では、介護報酬(請求)が主な収入。出ていくお金は人件費・送迎費・光熱費・賃料・消耗品・保守など。月次では、請求から入金までタイムラグが生まれます。この“時間差”が資金繰りの不安の源になることも。だからこそ、現金の残り具合(キャッシュフロー)を、日差しの変化を見るように毎日少しだけ確認することが鍵です。

もうひとつ大切なのは、稼働率(提供できるサービス枠のうち実際に使われた割合)。午前・午後・曜日ごとの偏りは、風向きのように変わります。小さな凹みの原因を見つけて整えると、収支は静かに持ち直します。例えば、送迎ルートの見直しや、キャンセル時の代替提案。特別な投資がなくても、日々の段取りで光は差します。

課題の整理と「比較表」

状況を整理するために、現場感覚で分けた比較表を用意しました。数字が得意でなくて大丈夫。感覚で「◎◯△」をつけるだけでも、次の一手が見えてきます。

領域現状の悩み(例)すぐできる一手中期の整え方
収入(売上)稼働に曜日差、キャンセル多いキャンセル待ち表の整備・前日SMS連絡ケアマネ向け「空き枠便り」を月1配布
コスト光熱費・送迎燃料の上昇送迎ルートの統合・給油日の固定化機器の待機電力一覧化・契約見直し
人材採用難・離職の早期化1on1を月1回・感謝メモの見える化短時間正職員制度・固定シフト選択制
事務記録が重い・情報が届かないタスク5分ルール・記録テンプレ統一ICT導入補助の確認・業務分担の再設計
地域連携紹介が安定しない包括・ケアマネへ月次近況FAX/メール季節の見学会・家族向け公開カンファ

なお、制度や加算の詳しい条件は自治体や最新通知で異なることがあります。具体の手続きは、各自治体・所轄機関に確認を。ここでは「今日から始められる段取り」を中心にお伝えします。

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