介護事業所の37%が赤字 現場の不安に向き合う|数字が苦手でもできるやさしい経営改善ロードマップ

実践:心を整えるケアと、すぐできる経営改善

ここからは、小さな行動提案を「今日」「今月」「3か月」の時間軸で示します。すべて、介護業界の中小規模事業所で実行しやすい内容です。現場の手触りを大切に、自然の流れに沿って。

今日:5分×3つの整え

  • (送迎)前日15時までのSMS/電話リマインドの文面を決める。「明日お会いできるのを楽しみにしています。体調や時間の変更があればご連絡ください」
  • (記録)バイタル・食事・排泄・水分・特記事項のテンプレをA4で統一し、記入例を1枚添える。
  • (心)“ありがとうの交換ノート”を事務所に置き、最初の一行を書く。「今日、◯◯さんの声かけで助かりました。」

今月:稼働とコストの「風向き」を整える

  • 稼働表を曜日・午前/午後で作り、空き枠を色で可視化。ケアマネ向け「空き枠便り」を月初に配信。
  • 送迎ルートの統合テストを1回実施。乗降時間の計測を行い、遅延要因を可視化。
  • 光熱の契約内容を確認。待機電力のリストを作成し、退室時のチェック項目に追加。
  • 1on1面談を全員に月1回、15分だけ実施。3つの質問を固定化(「今楽しいこと」「困っていること」「助けてほしいこと」)。

3か月:仕組みの背骨をやさしく建てる

  • 地域包括・ケアマネに向けて季節の見学会(30分)を開催。季節の制作物や運動の様子を共有。
  • ヒヤリハットの5分KYT(危険予知トレーニング)を朝礼に週1回。転倒・誤薬・誤嚥の予防に集中。
  • 自治体や関係機関のICT・機器導入補助の情報を確認。必要最小限から着手。
  • 家族向けに月次だより(A4片面)を配布し、在宅生活のコツや行事予定を伝える。

比較・推移・リストの構造化データ

以下は、会議でそのまま使える「比較」「推移」「チェックリスト」の表です。数値を入れて見える化すると、改善が動きます。

指標先月今月来月目標メモ
稼働率(午前/午後)曜日の偏りを確認
キャンセル率前日連絡の効果を記載
送迎遅延(件/日)ルート見直しの結果
職員残業(h/月)記録テンプレ導入効果
クレーム件数対応の振り返り
チェック項目担当頻度完了
前日リマインド連絡生活相談員毎営業日
空き枠便りの配信管理者月初
送迎ルート点検ドライバー月1回
1on1面談リーダー月1回
KYTミニ全員週1回

資金繰りを静かに守る5つの工夫

  • 入出金カレンダーを壁に。請求・支払・給与・家賃・返済の“山”が重なる週を可視化。
  • 発注の締め日を週1日に固定し、衝動発注を減らす。
  • 消耗品リストを「必須/代替可」で分け、在庫を月2回で点検。
  • 支払方法の分散(口座/振込日)を整理し、資金の谷を浅くする。
  • 小口現金の上限を決め、出納帳は毎日5分で記入。

「お金の流れを見守るのは、川のせせらぎを聴くこと。」

人材の定着と育ちを支えるやさしい制度

  • 短時間正職員の導入(週30h目安)。育児・介護と両立の道を作る。
  • 固定シフト選択制(早/中/遅)。生活リズムの安定が事故を減らす。
  • 教育の小分け:5分動画/紙1枚/現場OJTの三点セット。
  • 感謝の見える化:月1の小さな表彰(手書きカードで十分)。

地域とつながる——情報の風を起こす

  • 包括支援センター・ケアマネへ「今月の取り組み3行」を定期発信。
  • 家族へ帰宅後の様子の一言メモを渡す。安心は信頼を呼ぶ。
  • 地域の掲示板やSNSに見学日を固定掲載。

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。