
「リッター25円安」は実現するか 暫定税率後の税体系と物流をどう再構築するか
現状分析:暫定税率の正体と不都合な真実
「暫定税率」とは?経済的定義
暫定税率は、本来の税率に**“時限的に上乗せする追加税”のこと。ガソリンでは、揮発油税と地方揮発油税に「当分の間」上乗せ**が続き、実質的に高い税率が半世紀以上維持されてきた。
2009年に制度名は変わったものの、上乗せ分そのものは継続。目的も、もともとの道路整備から、一般財源・物価対策・エネルギー政策へと広がり、役割が曖昧になっている。
経済学的には、
①道路の受益者負担
②環境・安全保障の外部性コストの吸収
③安定した財源確保
という3つの目的が混在しており、これが税の仕組みを分かりにくくし、透明性を下げる要因になっている。
| 項目 | 代表的な税率・額(円/L) | 備考 |
|---|---|---|
| 揮発油税(本則+上乗せ) | 約48.6 | 上乗せ相当を含む実効 |
| 地方揮発油税 | 約5.2 | 地方財源 |
| 石油石炭税 | 約2.8 | ※推計(製品課税分) |
| 消費税(10%) | 取引価格+特定税課税対象 | 特定税にも課税される |
| 合計(消費税除く特定税) | 約56.6 | 価格に上乗せされ固定的 |
「税は簡素・中立・透明であるほど成長率を高める」
税制設計の原則(国際機関の整理を要約)
データが示す「不都合な真実」
第一に、暫定税率の長期化で“恒久税”のようになっている。導入から50年以上が経ち、税収は一般財源に組み込まれ、目的税としての性格が弱まった。
第二に、ガソリン課税を気候対策として使うには不十分で非効率である。一律課税のため、CO₂1トンあたりの実質的な負担に大きな差が生まれ、同じ排出削減でも不公平な負担が発生する。
第三に、ガソリン需要の価格弾力性は小さい(0.1〜0.2)ため、値段を動かしても短期では行動変化が起きにくい。価格政策だけで交通行動を変えるには、時間がかかる。
| 論点 | 観測データ/推計 | 示唆 |
|---|---|---|
| 家計ガソリン需要 | 約3,000〜3,300万kL/年(※推計) | 25円/Lで年0.75〜0.83兆円の負担減 |
| 短期価格弾力性 | −0.1〜−0.2(国内外研究) | 短期は数量反応小、価格が主に効く |
| CPI直接寄与 | ガソリンウエイト約1% | 25円下げで−0.1〜−0.2%pt |
| 税収影響 | 上乗せ相当 0.8〜1.0兆円/年(※推計) | 恒久化には代替財源の設計が不可欠 |
| 環境整合性 | ガソリン特化課税 | 炭素一物一価に反する非効率 |
「ガソリン上乗せは、財政・道路・環境の“何でも税”になっていた」
制度の多目的化が透明性を損なう















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