
「リッター25円安」は実現するか 暫定税率後の税体系と物流をどう再構築するか
【Q&A】制度と課題の深層
Q. 暫定税率撤廃で政府のエネルギー補助は不要になるか?
A. 代替にはならない。
補助金は**価格が急騰したときの“変動対策”であり、暫定税率の撤廃はガソリン価格の“恒常水準の見直し”**で、政策目的がまったく異なる。
過去2年間の補助によって、CPI(エネルギー項目)は
0.5〜0.8%ポイント低く抑えられた(内閣府推計)。
一方、暫定分の撤廃は恒久的な減税に近く、
価格の乱高下(ボラティリティ)には対応できない。
価格変動に対応するには、原油価格に連動して自動で補正する“トリガー条項(自動安定化装置)”の設計が引き続き必要である。
Q. 物流コストはどれだけ下がり、物価にどう波及するか?
A. 物流コストに占める燃料の割合を5%、ガソリンと軽油の影響を**50%**とすると、
25円/Lの値下がり → 物流費全体を約0.6%低下(推計)。
この物流コスト減が最終製品価格に20〜50%程度転嫁されると、
CPIへの間接的な効果は −0.05〜−0.1%ポイントにとどまる。
短期的に消費者が実感するのは、
ガソリンの店頭価格が下がること、そして“ドライブコスト”が即時に軽くなることである。
Q. 財源の穴はどこで埋めるべきか?道路は大丈夫か?
A. 受益と負担を踏まえると、道路財源は単一制度より“複線化”が合理的である。具体的には、
① 走行距離課金(VMT)や重量・走行ベースの課金
② 走行データを活用した“保険型”課金
③ 炭素税+定額還元(カーボン・ディビデンド)
といった複数方式を組み合わせることが現実的だ。
道路特定財源はすでに一般財源化されており、支出面では
維持更新>新設
へと優先順位を付け直し、歳出の硬直性を外す改革が求められる。
さらに、EV普及によりガソリン税という課税ベースは確実に縮小していくため、
ガソリン依存の税体系だけでは長期的に維持できない。。
Q. 脱炭素に逆行しないのか?
A. ガソリン上乗せ税の撤廃は、脱炭素政策と矛盾しない。
むしろ、同じ財源を “炭素税(CO₂は一物一価)” に置き換える方が合理的である。
そのうえで、税収を定額のカーボン・ディビデンドとして家計に中立的に還元すれば、負担の偏りを防げる。
炭素税は、
・産業横断で効率的
・燃料別の不公平を解消
・税収で逆進性(低所得層ほど負担が重い問題)を緩和できる
という利点があり、より透明で一貫した脱炭素政策になる。















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