
アサヒへのサイバー攻撃が波及、主要ビール各社に影響
政策提言:感情論を排した最適解(財源・エビデンス付き)
本件は民間オペレーションの問題に見えるが、波及の広さは社会的外部性を伴う。政府・業界・企業の三位一体で、「守る(Prevent)」「戻す(Recover)」「開示する(Inform)」の3軸に政策を整理する。
1. 政府:税制・補助・規制の三点セット
- 投資減税:中堅・中小のサイバー設備投資(EDR、バックアップ分離、ゼロトラスト関連)に対し、税額控除20〜30%(上限5,000万円)を時限措置。財源は既存のデジタル関連租特の見直しと、交付金の科目振替で年間500億円規模を確保。
- 共同SOCの共同調達:流通・食品製造向けに分野別SOCを整備し、ISAC(情報共有組織)と連動。初年度は官民折半で予算300億円。財源はデジタル庁・NISC関連の予備費の組み替え。
- 開示ルール:重大インシデントの再稼働見込みをSLA型で段階開示する指針を策定。ESG開示(サステナ)にサイバー成熟度KPIを追加。
2. 業界・標準化:PEPPOL/GS1の「二系統」化
受発注・請求の電子化は不可避だが、単一プロトコルの集中はSPOFになる。PEPPOLとAS2の二系統を残し、緊急時のフォールバック手順を標準化する。GS1標準(JAN/EAN・SSCC)を活かし、物流ラベルと電子データの分離運用を訓練に落とす。
3. 企業(小売・メーカー):BCPの数式化と契約の再設計
- BCPの数式化:代替率、SS、RTO/RPOを指標化。四半期ごとにTabletop演習でベンチマーク。
- 契約の再設計:サプライチェーン中断補償の保険条項、再稼働SLA、情報開示の時限を売買基本契約に明記。
- 在庫の二層化:通常在庫と非常在庫(温度帯・回転の最適解)を設計。センターのバッファに外部低温倉庫を活用。
財源なき政策は美文であり、数式なきBCPは儀式である。
松永 渉
エビデンスとして、国内の公的機関や国際機関は、インシデントの増加と復旧コストの上振れを指摘している(IPA「情報セキュリティ10大脅威」等)。民間調査でも、検知遅延が長いほど被害額が指数関数的に増える傾向が示される。RTO短縮とバックアップ分離は費用対効果が高い打ち手である。
小売の実務ガイド:翌週から変えられる5つのこと
- 安全在庫の再設計
年末などピーク時のサービスレベルを98%に引き上げる。安全在庫(SS)の z値 を見直し、冷蔵・常温など温度帯ごとのバッファを追加する。 - 代替SKUリストの事前定義
プレミアム、PB、他カテゴリを含めた「三段階の代替」をあらかじめ決め、SKU単位で棚割りと連動させておく。 - プロモーションの自動切替
納品未達が発生した場合は、該当商品の販促を自動停止し、代替SKUへ予算と売場露出を即時に振り替えるIFTTT型のルールを設定する。 - 例外レポートの可視化
POS・発注・納品データの差分が一定の閾値を超えた際にアラートを出す。部門長が毎朝確認する運用を徹底する。 - 共同訓練の実施
メーカー・卸と年2回のテーブルトップ演習を行い、再稼働までのSLAが現実的かを事前に検証する。
なお、同様のサプライチェーン・ショックについては、既存レポート「水際の物流停止が価格に波及するまでの4週間」で分析している。今回も、
第1週:欠品発生 → 第2週:代替拡大 → 第3週:荒利圧縮 → 第4週:販促計画改定
という典型的な波形を描く可能性が高い。













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