高校野球7イニング制は妥当か。命を守る視点で他競技と比較し、議論の現在地を探る

現場・当事者の視点：スポーツ・健康産業が流した汗と涙

高校の指導者は、グラウンドの土を誰より知っている。彼らはわかっているのだ。「あと2イニング」が、まだ育ちきらない肩に何を強いるか。地域にも医療にも、負担は跳ね返る。整形外科の待合室で順番を待つ若い腕、疲労骨折寸前のX線写真、保護者の不安。スポーツ・健康産業の現場でも、この夏の「長さ」の議論は、もう他人事ではない。

運動部活動のガイドライン（スポーツ庁などが示す考え方）も、休養・安全の重要性を繰り返し訴えてきた。投球数の管理、登板間隔の確保、気温とWBGT（暑さ指数）を見ながらの運営判断。テクノロジーは現場に届いている。帽子の縁に取り付ける簡易センサー、アプリで見える化される疲労度、救護導線を可視化するフィールド図。必要なのは「決断」だけだ。

「守るために短くする。短くしても、濃くできる」

トレーナーの現場感覚

健康産業のプレイヤーたちは、競技を外から支える味方だ。熱中症対策の冷却ギア、リカバリーウェア、携帯型のミストやテント、WBGTの遠隔監視、点滴に頼らない補水設計。企業の知恵は、スポーツの逆境にこそ光る。学校・連盟・自治体・企業が、ひとつのピッチに立つとき、スポーツは命を守りながら強くなる。

この不屈の精神は、以前紹介した物語『球児はなぜ立ち上がれたのか——ケガからの再起動』とも重なる熱さがある。逆境は、人と組織を試す。だが今回は、「踏ん張らない勇気」が問われているのだ。