高校野球7イニング制は妥当か。命を守る視点で他競技と比較し、議論の現在地を探る

【Q&A】深層に迫る

Q. 7イニング制にすると、ドラマが薄くなるのでは？

A. 薄くならない。設計次第で、むしろ濃くなる。 逆転劇は「長さ」ではなく「接戦密度」から生まれる。序盤の価値が高まり、走塁・守備・バント・代打のタイミングは早まる。ベンチワークは難度が上がり、観客は「1球の重み」をより強く味わうだろう。9回での名勝負は歴史だ。だが、7回でも新しい名勝負は必ず生まれる。

Q. 選手の育成面で不利にならないか？

A. 育成は総打席・総投球で考えるべきだ。 試合を短くしても、年間の実戦機会・練習設計を見直せば育成の密度は保てる。投手は投球数管理で「質」を高め、野手は守備・走塁・サイン理解に時間を振り向ける。酷暑期に無理をするより、涼しい時期に集中して「賢く負荷をかける」ことが、長い競技人生を支える。

Q. 7回で決着がつかない接戦の運用は？

A. タイブレークの設計を磨けばよい。 延長はタイブレークで迅速に、観客が理解しやすく、公平性を担保する。大切なのは統一運用と事前周知。例えば「8回から走者を置く」「打順の扱い」「守備側の選択権」など、現場の声を拾いながら最適解を探ればいい。要は、混乱を避け、納得度の高い「終わらせ方」を持つことだ。

Q. 観客やメディア露出は減らない？

A. 観戦体験は時間ではなく設計で伸びる。 テンポの良い攻防、データ可視化、解説の工夫、救護体制の安心感——これらは観客満足を押し上げる。開始時間の最適化で「家族で見られる甲子園」を増やせるかもしれない。メディアも「濃度」を伝える編集に切り替えれば、物語はむしろ際立つ。

教訓と未来：逆境を越えた先にあるもの

「9回」は文化であり、祈りだ。だが文化は、守るために変わる。安全が前提にあるからこそ、ドラマは輝く。「終わらせる勇気」こそが「続ける力」になる。それが、スポーツが幾度となく証明してきた真理だ。

健康産業の進歩は、フィールドで生きる。ウェアラブル、冷却、栄養、睡眠、メンタルケア。これら全てが整ったとき、選手は堂々と勝負に向かえる。「命に敬意を払う競技」は、地域に愛され、才能を呼び込み、次世代が誇れる景色をつくる。

恐怖訴求の結論：いま、勇気を持って設計を変えなければ、最悪の未来は静かにやって来る。救急車のサイレン、空席のベンチ、閉ざされた部室。だが逆に、勇気を持って変えれば、スタンドには笑顔が戻り、ベンチには余裕が生まれ、地域には誇りが残る。どちらの未来を選ぶかは、いま、この夏の私たちの決断にかかっている。

「短くしても、熱い。むしろ、熱くできる。」