
上野動物園の双子パンダ 来月返還へ…国内飼育約50年ぶりゼロに
【Q&A】制度と課題の深層
Q. なぜ返還が必要なのか。所有・費用の制度はどうなっているのか。
A.パンダは「所有する資産」ではない。多くは中国からの**貸与(リース)**で、所有権は中国側にあります。契約には、
期間・繁殖研究・研究協力金(年100万ドル前後/ペアが相場とされる)
といった条件があり、契約終了、繁殖状況、健康状態などを踏まえて返還が決まります。つまり自治体や動物園にとってパンダは、
いついなくなるか分からない、不確実性を抱えた資産です。だから本来の前提は明確です。「パンダがいること」を前提に経営しない。「いなくなる前提」で価値をどう広げるかが問われます。
Q. 来月の返還で、上野エリアの消費はどれだけ減るのか。
A. ベースライン次第だが、差分来園80万〜120万人、域内一人当たり消費4,000〜6,000円と仮定すると、域内消費の押し下げは年32〜72億円(直販含まず)。乗数を1.6とすれば、域内GDPで約51〜115億円のマイナス(※推計)。短期は下振れし、中期には代替コンテンツの立ち上げと販促で収斂が見込まれる。
Q. 「観覧1分」はどれだけの人をさばけるのか。公平性は担保できるのか。
A. 単線動線で1グループあたり1分、1時間60グループ。1グループを平均4人と仮定すると、時間最大240人、7時間で1,680人程度(※安全マージンを見込まずの上限推計)。公平性は先着順では担保が難しく、抽選・時間帯予約・二重認証(本人確認)の組み合わせが必要である。返還前のピーク需要を考えると、1分制限は合理的な需給制御である。(最大待ち時間4時間)
| パラメータ | 値 | 備考 |
|---|---|---|
| 観覧時間 | 1分/グループ | 報道値 |
| グループ規模 | 4人(仮定) | ※推計 |
| 処理能力 | 約240人/時 | 60グループ×4人 |
| 日次処理 | 約1,680人 | 7時間稼働想定 |

Q. 今後の上野動物園はどうなるのか。何をKPIにすべきか。
A. KGIは「来園者満足度×LTV×域内波及の最大化」である。KPIは(1)テーマ別来園比率(分散度)、(2)時間帯別平均待ち時間、(3)一人当たり体験数(展示・教育・ワークショップ)、(4)会員継続率、(5)回遊券(動物園×博物館)利用率。スター不在期こそ、体験深度と関係性を積み上げる局面である。
「KPIを“待ち時間の短さ”から“学びの深さ”へ」
この経済トレンドについては、以前のレポート『「公共文化施設の収益KPI再設計」』で詳細に分析したが、動物園にも同じ論理が通用する。来場者は「時間」という最も高価な資源を持ち込む。施設側は、その時間を「知的満足」へ最適変換する義務がある。















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