上野動物園の双子パンダ 来月返還へ…国内飼育約50年ぶりゼロに 

解決策:制度設計と現場の打ち手

提案は三層で構成する。(A)短期の需給制御と情報設計、(B)中期の収益多角化、(C)長期の保全・研究拠点化である。各層のKPIと期待効果を表に整理する。

期間打ち手KPI期待効果(※推計)
短期(〜6か月)時間帯別予約・観覧の抽選化、需要予測公開、園内回遊動線の片方向化平均待ち時間-30%、滞在時間+10%満足度の底割れ回避、レビュー評価の下振れ抑制
中期(〜2年)ダイナミックプライシング、会員制度強化(ファミリー・企業)、夜間プログラム客単価+8〜12%、会員継続+5ptスター不在期の収益安定、季節分散
長期(3年〜)「上野バイオダイバーシティ・キャンパス」構想(博物館群と共通回遊券)、教育プラットフォーム化文化施設横断の回遊率+15pt域内消費の底上げ、都市ブランド価値の強化
表4:期間別の打ち手とKPI

ダイナミックプライシングは、混雑緩和と収益向上の双方を満たす数少ない手段である。価格感応度が低い時間帯(夜間・平日午後)に割安を設定し、ピークに上限価格を適用する。公共性に配慮し、低所得層・子ども・都民割等の枠を制度的に確保する二階建て価格にするのが望ましい。

価格設計静的料金動的料金(例)差分効果(※推計)
平日昼600円500〜600円集客+5〜8%
休日昼ピーク600円600〜800円(上限)混雑-10〜15%、収益+5%
夜間(特別)1,000円(限定プログラム)客単価+20%、新規訴求
表5:ダイナミックプライシングの概念比較(例示)

「“一目見た”から“何かを持ち帰る”へ」

総括:持続可能なシステムへの提言

パンダ返還は「魅力の喪失」ではない。構造を直すチャンスです。
問題はパンダではなく、単一スターに頼り切った設計でした。

制度設計の核心は、次の三点に集約されます。

① 需給を見える化し、価格を柔らかく使う行列は無料ではありません。
待ち時間はコストであり、価格はその代替手段として機能します。

② 体験を深くし、「過ごす時間」の価値を上げる
待たせないことは、満足度を削るのではなく、むしろ高める投資です。
「見る」から「理解する・関わる」へ。

③ 上野公園全体で回遊を最適化する
園単体ではなく、公園・博物館・街を一つの体験として設計する。

ここで重要になるのが行政の役割です。動物園だけでは難しい、越境の利得をつくること。

  • 共通回遊券
  • 広場や道路空間の活用
  • 夜間の安全・照明整備
  • 混雑情報を統合するデジタル表示

さらに、入場料や観光税の一部を透明な基金に積み立て、保全・教育・人材に再投資する
成果はKPIで公開し、次の投資につなげる。

これは上野だけの話ではありません。全国の動物園・文化施設が直面する、共通の課題と解答です。

出典:対象ニュース・関連資料、JNTO統計(訪日外客数、2023年)、東京都関連公表資料(各種、※推計を含む)。数値は一次情報を優先しつつ、公開情報が限定的な箇所は仮定と範囲で示した。

(文・石垣 隆)

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。