【178万円】年収の壁引き上げで中小企業はどう変わる?現場が直面する調整と課題を解説

178万円合意の光と影――政治と制度が残した課題

今回の合意は、政権と中道野党の「実務的接点」を演出する。光の部分は、分断を超えた政策合意という絵だ。闇の部分は、制度の複雑さが増すほど、政策の評価が“わかる人にしかわからない”ものになり、有権者の判断がイメージ先行になることだ。細部で負担を被るのは、概して声の小さい中小企業と非正規の現場である。

さらに言えば、壁の設計は労働市場の性別役割分業と密接に絡む。家族単位で扶養を軸にした制度は、就労調整を合理化し、長時間正社員中心モデルを温存する。これを修正するには、税と社保の「個人単位化」へ踏み込む覚悟が要る。だが、それは選挙で説明が難しい。だから、今日は壁の移設で「損失回避」に応える—という選択になる。

政治の合理、企業の合理、家計の合理。それぞれの合理が足し合わさって、社会の最適からはズレる。この集団的最適化の失敗を埋めるのが、設計の技術だ。段差を連続に、線形を滑らかに—数式の話に見えるが、実は「人の時間と安心を節約する」ための設計思想である。

ここで、あえて光も見よう。178万円が一里塚となって、次は「段差の連続化」へ議論が進む可能性もある。壁移設→評価→次の一手、というガバナンス・サイクルが回り始めるなら、政治は機能する。大事なのは、「やって終わり」にしないこと。期限、検証、公表—この三点セットだ。

「壁を動かす政治」から「段差を消す政治」へ。

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