口座売買は犯罪──警察庁ショート動画が示す抑止の光と拡散の影

事実と背景:きれいなスローガンと汚れた現実

「口座売買」とは?定義解説

俗に言う「口座売買」は、銀行口座や通帳、キャッシュカード、ネットバンキングの認証要素(ID/パスワード/トークン)を、譲渡・売買・貸与する行為を指す。法的には、犯罪による収益の移転防止に関する法律(いわゆる犯収法)などにより、通帳・キャッシュカードの譲渡・有償譲渡の勧誘等は原則禁止とされ、違反は1年以下の懲役または100万円以下の罰金(または併科)の対象になり得る、といった解説が一般的だ。さらに、特殊詐欺等に使用されることを認識して関与すれば、詐欺罪の共犯・幇助、犯罪収益隠匿等でより重い処罰に直結する可能性もある。

この「単純な違法」には、単純でない需要がある。特殊詐欺、闇金、マネロン——彼らは足のつきにくい受け皿を常に求める。だから買う人がいる限り、売る人もいる。SNSで「誰でもできる高収入」「即金3万円」と囁かれれば、今日の家賃と引き換えに、明日の信用が市場に流れる。動画の再生回数が増えても、需要のグラフは動かない。ここが最初の難所だ。

メディアが報じない舞台裏(比較・推移・リスト)

「口座売買は犯罪」——その通り。しかし舞台裏には、メディアでは伝わりにくい運用と損得がある。金融機関、当局、SNSプラットフォーム、それぞれの「インセンティブ」を並べてみよう。

アクター短期の動機中期のリスク望ましいKPI(例)
金融機関(銀行・証券)口座獲得数/UX最適化マネロン・特殊詐欺関与認定、行政処分疑わしい取引報告(STR)適正化率、不正口座早期凍結率
当局(警察庁・金融庁)被害額の抑止、検挙数規制後追い・技術負債名義貸し関与抑止の再犯率低下、若年層認知度
SNSプラットフォーム滞在時間/広告収入違法広告の温床と批判違法勧誘検知率/削除までの中央値
闇バイト仲介口座の仕入れ/回転検挙・摘発(犯罪KPIは割愛)
各プレイヤーの損得勘定。KPIは実務のための例示。

被害の推移はどうか。警察庁資料によれば、特殊詐欺の認知件数・被害額はここ数年高止まりが続く(2023年は年間で数百億円規模の被害、という公表がある)。検挙は進むが、アカウントの供給網を断ち切るのは難しい。なぜか。供給の入口が「困窮」「無知」「SNSの一回タップ」にあるからだ。そして、コンプラの出口が人手と書類に偏るからだ。

キラーフレーズ:「動画で止まる犯罪は、そもそも動画で始まらない。」

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