物価高でも売上が落ちにくい理由──推し活3.5兆円に学ぶ「中小小売の売り場設計」とKPI

現場・家族の視点|小売業と食卓から見えること

夕飯はカレー。玉ねぎを炒める匂いに、娘はスマホで今夜の配信時間を確認する。父は食後にスポーツ中継のチケット抽選結果を気にしている。家計の話は続くけれど、「推しのための予算」だけは、誰も軽く扱わない。家族の会話に生まれたこの暗黙のルールは、店先にも現れている。

商店街の玩具店は、月に一度、店頭の黒板に「推し棚入れ替え予告」を描く。高校生の店員が、手書きのポップに自分の推しコメントを書くと、写真が撮られてSNSで拡散される。中華料理屋はライブ帰りのファン向けに「推しカラー麺」限定で出す。色が思い出と結びつき、食事が儀式に変わる。

ここからは、小さな小売が明日から実装できる設計を、できるだけ具体的に書き留める。必要なのは巨額の広告費ではない。物語の手触りと、段取りの良さだ。店ができるのは、心の温度を逃がさない器を用意することだ。

  • 推しの居場所棚A4幅の「推しスペース」を常設。顧客の投票で翌月の陳列を決める。
  • 儀式化カレンダー:発売日・記念日・聖地の日をカレンダー表示。来店動機を「祝祭化」。
  • ミラーリング在庫:推しが使う日用品のセレクト(同型・同色)を小ロットで常備。
  • 撮れる導線:店内1カ所に「撮影許可ゾーン」を設置。ハッシュタグを提示。
  • スタッフPFP(推しフェイスプレート):店員の推しを名札に併記。会話の糸口に。
  • 巡礼スタンプ:近隣店舗と共同で3店舗回遊のスタンプラリー。地図は手描きで温度を。
  • 限定番号の意味付け:価格やロットに“物語の番号”(誕生日・周年)を付与。
  • 布教割り:友人同伴の来店でポストカード進呈。「誰かに語る」を後押し。

「店は、商品を並べる場所から、誰かの“諦めない”を集める場所へ。」

期間やること必要コスト期待効果計測方法
1-30日推し棚設置・撮影ゾーン整備・スタッフ名札更新低(棚板・POP・照明)SNS露出増・初回来店増ハッシュタグ投稿数、来店アンケート
31-60日投票制陳列・発売日カレンダー運用・巡礼スタンプ開始中(スタンプ・小景品)再訪率向上・回遊創出再訪率、客単価、回遊距離
61-90日限定番号商品・布教割・UGC企画(フォトコン)中(限定タグ・印刷物)コミュニティ形成・プレミアム比率増限定完売速度、同伴来店率、UGC採用件数
行列は広告ではなく、物語の導線になる

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