
経産省2026予算でAI・半導体1.239兆円──中小企業が売上に変える10年戦略
現場・社会への影響:投資しない損益分岐点
投資を巡る論点は「回収可能性」である。新税制はROI15%以上、投資額35億円以上(中小5億円以上)を条件に、即時償却か税額控除7%(建物は4%)を5年間選択できる。ここで重要なのは、企業の加重平均資本コスト(WACC)との比較である。一般にWACCが6〜8%であれば、ROI15%はリスク調整後でも十分な超過リターンだが、無形資産(データ整備・モデル精度向上・組織変革)を含めないとROIが表面上低く見える「測定の罠」に陥る。
| 企業属性 | WACCの目安 | 税制閾値(ROI) | 示唆 |
|---|---|---|---|
| 大企業・投資適格 | 4〜6% | 15%以上 | 即時償却で初期赤字を平準化、無形投資込みで達成現実的 |
| 中堅・上場 | 6〜8% | 15%以上 | 税額控除とセットで回収期間短縮が鍵 |
| 中小・非上場 | 7〜10% | 15%以上(投資額5億円〜) | 共同体制(SIer・サプライヤー連合)で規模要件充足が現実解 |
電力コストも損益分岐点を左右する。AI学習クラスタは消費電力が大きく、PUE(電力使用効率)とkWh単価の差がトータルコストの数十%を左右する。再エネ・原子力のポートフォリオと、データセンターの立地(寒冷地・送電アクセス)で、国内の「計算コスト」を下げる努力が投資の実効性を高める。
車体課税の見直しは、EV/ハイブリッドの相対価格に影響し、サプライチェーンのモデル切り替え速度を左右する。環境性能割の廃止は購入初期負担を下げる一方、燃費基準強化とエコカー減税延長は技術選択の誘導を継続する。自動車関連中小にとっては、部材の高付加価値化(電動化・軽量化・熱マネジメント)に軸足を移すタイミングである。
「先送り」はコストであり、毎月積み上がる“外部計算資源の利用料”という固定費になる。
| 領域 | 予算規模 | 政策目的 | 企業側KPI例 |
|---|---|---|---|
| 基盤モデル/データ基盤 | —(1.239兆円内数) | 国産モデル・データ主権 | 推論コスト/1kトークン、精度、学習時間 |
| フィジカルAI | 3873億円 | 現場自動化・安全性向上 | タクトタイム短縮率、停止時間削減、欠陥率 |
| 先端製造(ラピダス) | 1500億円 | 2nm級量産への時間短縮 | 歩留まり、月産WSPM、EUV稼働率 |
| 重要鉱物 | 新規50億円 | 供給多角化・リスク低減 | 調達シェア分散指数、在庫日数 |
| NEXI財務強化 | 1兆7800億円 | 大型案件の信用供与 | 引受限度枠、保証残高、案件成立率 |
| 次世代革新炉 | 1220億円 | 脱炭素と安定電源 | 運転開始目標、LCOE、規制適合 |
中小企業が“国の投資”を売上に変える方法(実装ガイド)
- ステップ1:ファンド・補助と税制を「束」で設計する—NEDO系や自治体の設備補助+新税制(即時償却or税額控除)を組み合わせ、キャッシュアウト時期を最短化する。
- ステップ2:5億円閾値を越える共同体制—OEM、SIer、大学とのコンソーシアムで「投資額要件」を充足し、成果物の共用・二次利用でROIを底上げする。
- ステップ3:フィジカルAIの「現場KPI」から始める—タクト、欠陥率、段取り替え時間など定量KPIに紐づけ、1年以内の見える回収で経営会議を通す。
| 要素 | 選択肢 | 留意点 |
|---|---|---|
| 設備投資 | AIカメラ、協働ロボット、エッジGPU | 減価償却年数と即時償却適用の整合 |
| ソフト・データ | 品質検査モデル、作業ログ基盤 | 資産計上ルール、内部統制 |
| 外部資金 | 政策金融、信用保証付融資 | WACC低下効果、NEXI/自治体スキーム活用 |
| 税制 | 即時償却 / 税額控除7%(建物4%) | プロジェクト別の最適化(CF試算) |
| 収益化 | 歩留まり改善、外販化(他社向けサービス) | KPI連動の成果報酬契約で早期売上化 |
この統計トレンドについてのポイントは「初年度から赤字に見えない設計」である。即時償却は損益計算書上の利益を圧迫しやすいが、並行して税額控除を使い、キャッシュフローを平準化すれば、金融機関の審査も通しやすい。投資しない場合に発生する外部計算資源の利用料、低歩留まり、欠員補充のための外注費は、“見えない固定費”として毎月累積する。














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