経産省2026予算でAI・半導体1.239兆円──中小企業が売上に変える10年戦略

【Q&A】データ政策の論点

Q1. 1.239兆円のAI・半導体予算は過大ではないか?

A. 相対で見るべきである。対GDP比では依然として主要国のCHIPS/AI投資と同程度かそれ以下の水準に留まる見込みで、海外依存による恒常的な外部支払い(クラウド・IPライセンス・装置輸入)を考慮すれば、国内の資本ストック形成は合理的である。過去の液晶の轍を避けるには、補助金の「出口」(需要・人材・電力・規制)の同時設計が前提となる。

Q2. 「大胆な投資促進税制」の実効性は?

A. 即時償却は投資意思決定を前倒しする効果が強い。一方でP/L上は減益要因となりうるため、税額控除との最適組み合わせとキャッシュフロー管理が鍵である。ROI判定では、無形資産の内部化効果(学習データ蓄積・ノウハウ)を定量化することが重要である。

Q3. 中小は5億円の投資要件をどう超えるか?

A. コンソーシアム型が現実解である。OEM/一次サプライヤー、SIer、地域大学の3者連携で案件を束ね、共通のデータ基盤とモジュール化したAI部品(検査、搬送、需給予測)を共同調達する。案件横断の再利用率を高め、投資単位当たりの売上貢献を引き上げる。

Q4. 電力・エネルギーはどこまでボトルネックか?

A. AI学習と先端製造は電力集約的であり、長期固定価格の再エネ・原子力・高効率ガスのポートフォリオが不可欠である。データセンターではPUE改善(液浸冷却等)、工場では需要応答と自家発の補完でコスト弾力性を確保する。電源コストの0.5〜1円/kWhの差が、10年累計の投資回収に有意な差を生む。


政策提言:感情論を排した最適解

提言1:成果連動・マイルストーン型補助金への一本化。歩留まり・消費電力・現場KPIの達成で段階支払とし、遅延時は自動減額する。出口は国内需要創出(公共調達・規制整備)とセットで担保する。

提言2:「無形資産」を税制の主舞台へ。データ整備・評価・ガバナンス費用を資産計上可能な範囲で明確化し、R&D減税の控除率をデータ・AI評価実装に連動させる。人的投資(再教育)を費用扱いのままにせず、一定の資本化を認める国際的議論を主導する。

提言3:電力長期契約(グリーン+安定電源)の拡充。データセンター・ファブ向けに長期PPAと容量市場の制度連携を強化し、AI/半導体のLCOE(均等化電力コスト)を国際競争力ある水準へ。

提言4:NEXIを起点に「民間長期資金」を呼び込む。交付国債で強化された引受余力を、官民ファンド・年金・保険の長期投資と結合し、プロジェクトボンドの市場を拡大。信用補完による資本コスト低減をWACCで2〜3%ポイント狙う。

提言5:SME向け「共通部品化」と逆オークション。フィジカルAIの共通モジュール(外観検査、物流最適化)を政府調達で標準化し、逆オークションで最低コスト・最短納期を選ぶ。スケール効果で中小の導入コストを一括で引き下げる。

政策年度財源の目安エビデンス・根拠
成果連動補助の再編既存補助の再配分(歳出中立〜数千億円)達成時支払で不用額減、遅延案件の支出抑制
データ投資の税制優遇税収影響:年数百億〜R&D減税の弾性値から推計、無形投資の生産性寄与
電力長期契約の拡充系統・容量市場整備:年数百億円AI/半導体のLCOE低下で長期の税収増・雇用創出
NEXIの信用補完拡大交付国債活用(既定)大型案件の成立率向上で外需獲得
SME共通部品化・逆オークション数百億円スケール調達で単価10〜30%低下の実績一般論

財源は、再配分(成果連動化)と信用補完の拡充で「質」を上げるのが筋である。追加の新規国債発行に頼らずとも、無駄打ちを減らし、長期資金を呼び込めば、実質的な資本コストは下げられる。税制の減収は成長による税基盤拡大で回収可能であり、ここでも「投資しない損失」の方が大きい。


関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。