東京都の不妊治療補助 新たに体外受精なども適用拡大へ

データで見る「乖離」—費用・成功率・家計負担

費用の名目水準は単純だが、家計の体感は「回数×確率×時間」で決まる。以下の表は、標準的な費用レンジと保険適用後の自己負担レンジ、そして東京都が仮に「1回5万円/10万円/20万円」を上乗せした場合の自己負担の目安を示す(注:東京都の具体的単価・上限は公表内容に依存。ここでは試算)。

項目目安金額注記
ART総費用(1回)40〜60万円採卵・培養・移植の合計(保険外加算は別)
保険適用後の自己負担(3割)12〜18万円主要工程が保険対象、加算・先進医療は別
都の上乗せ5万円7〜13万円12〜18万円 − 5万円
都の上乗せ10万円2〜8万円12〜18万円 − 10万円
都の上乗せ20万円0円(下限)実費を下回る分は0円、未保険部分は別

成功率は年齢で大きく異なる。一般に、移植あたりの出生に至る確率は、34歳以下で20〜30%、35〜39歳で10〜20%、40歳以上で5〜10%程度のレンジが報告される(施設差あり)。この成功率カーブと費用を掛け合わせると、家計が考えるべきは「1児あたり期待必要回数」と「1児あたり期待自己負担」である。

年齢層移植あたり出生確率(目安)1児あたり期待移植回数保険+都10万円補助時の期待自己負担(目安)
〜34歳20〜30%3.3〜5.0回(2〜8万円)×3.3〜5.0=6.6〜40万円
35〜39歳10〜20%5.0〜10.0回(2〜8万円)×5.0〜10.0=10〜80万円
40歳〜5〜10%10.0〜20.0回(2〜8万円)×10.0〜20.0=20〜160万円

この表は単純化しているが、「都の10万円補助×保険適用」の組合せが、若年層では1児あたり実負担10〜40万円のレンジに収め得ることを示す。家計の継続性、すなわち時間割引に耐える負担感が生まれる。


現場・社会への影響:世帯の損益分岐点

世帯の意思決定は、結局 「払えるか」より「続けられるか」 で決まります。

共働き・年収600〜800万円の家庭では、
体外受精1回 12〜18万円ボーナス1回の1〜2割
これが2〜3回続くと、「やってみよう」から「もう無理かも」に変わります。

でも東京都の上乗せで自己負担が 2〜8万円 になると、話は変わります。
この水準なら 「毎月のやりくりで吸収できる」 と感じられる。
行動経済学が示す通り、1回ごとの負担が軽いほど、人は続けられるのです。

もう一つの分岐点は 時間
体外受精は1回で終わらないことが多く、複数回やって初めて結果が出る治療です。
だから 1回の費用が下がるほど、続ける決断がしやすくなり、最終的に赤ちゃんにたどり着く確率も上がる。

東京は病院が多く待ち時間が少ないため、お金を下げる政策の効果が出やすい場所でもあります。

企業にも良い影響があります。
都の補助で大半がカバーされれば、会社が 1回2〜5万円 乗せるだけで、
従業員の負担感は 大きく軽くなる
その結果、採用・定着・働き続けやすさが改善する。

つまり、
「公的補助 × 企業の支援」 がそろうと、
子どもを持つ選択が 現実的な未来 になるのです。

「費用の段差を1段下げるだけで、継続率は階段状に上がる。」

— 行動の閾値は小さな価格差で越えられる

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