
東京都の不妊治療補助 新たに体外受精なども適用拡大へ
【Q&A】データ政策の論点
Q1. どれだけ安くなるのか?—家計の実負担は「2〜8万円/回」が現実解
A. 東京都の具体的な上乗せ単価次第だが、保険適用後の自己負担12〜18万円に対し、都が10万円/回を上乗せすれば、1回あたり実費は2〜8万円のレンジに下がる。5万円なら7〜13万円、20万円なら「保険対象工程」に限れば下限0円に近づく(ただし保険外の先進医療や付加的検査は別枠)。
| シナリオ | 家計実負担(1回) | 留意点 |
|---|---|---|
| 保険のみ | 12〜18万円 | 保険外併用不可の制約に注意 |
| 保険+都5万円 | 7〜13万円 | 心理的ハードルは一定程度継続 |
| 保険+都10万円 | 2〜8万円 | 継続率の上昇が期待 |
| 保険+都20万円 | 0円(下限) | 保険対象外の費用は別 |
Q2. 需要急増で医療現場は逼迫しないか?
A. 短期的には受診増が起きるが、東京都内はクリニック密度が高く供給余力がある。価格弾力性0.2〜0.4程度(費用10%低下で受診2〜4%増)の海外研究知見を当てはめると、10万円の上乗せは受診増を招くが、予約待ちの平準化と同時に、キャンセル率の低下(継続性向上)で生産性は上がる。都はデータ連携により、混雑の可視化と予約最適化(曜日・時間帯)の支援を併走すべきだ。
Q3. 財政負担はいくらか?—50〜200億円/年のレンジを設計する
A. 東京のART件数は全国の相当部分を占める。仮に対象件数を年間50,000〜100,000回と置くと、都の上乗せが1回10万円なら50〜100億円、1回20万円なら100〜200億円/年のオーダーである。出生というアウトカムとの費用対効果を測るために、「追加出生1人あたりの公費投入額(Cost per Additional Birth)」をKPI化するのが妥当だ。
| 年間対象件数(仮) | 上乗せ5万円/回 | 上乗せ10万円/回 | 上乗せ20万円/回 |
|---|---|---|---|
| 50,000回 | 25億円 | 50億円 | 100億円 |
| 75,000回 | 37.5億円 | 75億円 | 150億円 |
| 100,000回 | 50億円 | 100億円 | 200億円 |
財源は後述の通り、都の一般財源の自然増収、国の基金活用、企業連携の三層での安定化が必要である。
Q4. 「効果」はどのくらい見込めるか?—出生+1,000〜3,000人/年のレンジ
A. ベースラインとして東京都の出生数を約10万人規模と置く。ART出生比7%前後から、価格引下げで受診と継続が上がり、ART出生比が+1〜3ポイント上がると仮定すると、追加出生は年+1,000〜3,000人のレンジになる(対象件数・年齢構成・成功率の改善次第)。政策実施後1〜2年で効果が立ち上がり、その後は年齢構造の影響で逓減するため、評価はロールリングで更新すべきである。
政策提言:感情論を排した最適解
提言は「データ→要因→影響→提言」の順で組み立てる。鍵は3点。(1)家計フローを下げる「単価×回数」の設計、(2)年齢構成に応じた成功率の底上げ、(3)持続可能な財源アーキテクチャである。
提言1:1回あたり上乗せ「10万円前後」+回数上限の賢い設定
実務的には、1回あたり「10万円前後」の上乗せが費用対効果の均衡点である。これにより家計実費は2〜8万円のレンジに入り、継続率が上がる。一方で、無限定の回数支援は費用に対して出生増が逓減しやすい。回数上限を設定しつつ、「累積出生で評価して一定基準を満たせば延長」という成績連動の柔軟性を設けると、資源配分の効率が上がる。
提言2:検査・先進医療の「選択と集中」—補助対象の優先度づけ
PGT-Aなどの遺伝学的検査、タイムラプス培養など、保険外の先進医療は費用が嵩む。エビデンスに基づき、年齢・反復不成功などの条件に応じて優先度を設定し、「出生増への寄与が高いケース」に限定して部分補助を行う。広く薄くではなく、「成功率を1ポイント押し上げる投資」を優先する。
提言3:データ基盤の常設—全数レジストリとKPIの公開
補助の目的は出生というアウトカムの最大化であり、プロセス評価ではない。東京都として、施設別の治療件数・成功率・中断率・待機時間を匿名化で集計し、四半期ごとにKPIを公開する。加えて、所得帯・年齢帯・地域別の利用率をモニタリングし、バイアス(高所得偏重など)を検出したら設計を調整する。
提言4:財源—3層の安定調達(都一般財源+国基金+企業連携)
・短期(初年度〜):都の一般財源(自然増収分)から50〜100億円規模を確保。都の一般会計規模は大きく、弾力的な配分が可能だ。補助の立ち上がりを迅速に行う。
・中期(2〜5年):国のこども・子育て関連基金の交付金(該当スキームがある場合)を組み合わせ、都負担の変動を平準化。補助対象の適正化(年齢・回数・先進医療の選択)で費用の伸びをコントロールする。
・民間連携:企業の福利厚生とマッチング(例:企業が2〜5万円/回を負担、都が10万円/回を負担)。企業側の費用は賃金原資よりも小さく、採用・定着の便益が高い。都は「福利厚生スキーム登録制度」を設け、参加企業に認証マークと情報提供を行う。
「財源は“単年度の美談”ではなく、
— 政策は持続可能性が成否を分ける
複数年度のキャッシュフロー設計で語れ。」













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