企業倒産1万件超・前年比3%増―2025-2035の「価格×人手×資金繰り」三重苦を乗り切る設計図

現場・社会への影響:中小企業の損益分岐点

損益分岐点(BEP)は、固定費÷(1−変動費率)で表される。物価高で変動費率が上がり、人手不足で固定費(人件費・採用費)が上がると、BEPは非線形に跳ね上がる。価格転嫁が遅れれば分母は小さく、固定費増と相まって「売上の伸び以上に利益が痩せる」。よくある誤解は「売上が伸びているから安全」という判断だが、粗利率の低下と回転期間の延伸が伴うと、キャッシュは逆に減る。

感度分析(概念図)ケースAケースBケースC
売上(基準=100)100105110
変動費率60%62%64%
固定費353637
粗利(売上×(1−変動費率))4039.939.6
営業利益(粗利−固定費)53.92.6
示唆基準売上拡大でも利益圧迫売上増でも利益半減
価格転嫁遅れ+人件費・原価上昇が同時に進むと、売上増でも利益は痩せる(数値は概念例)

資金繰りはさらに厳しい。売掛回収が遅れ、在庫が積み上がると、運転資金は平方根法では吸収できない伸びで増える。多くの中小企業で見られるのは、売上の成長に伴い「回収サイト」が自然に延びる現象である。価格交渉力の弱い立場では、手形サイトや検収条件で劣後し、粗利が同じでもキャッシュが枯渇する。つまり、倒産は「赤字」の結果ではなく「資金ショート」の結果として発生しやすい。

地域経済への波及も大きい。中小企業は雇用の7割前後を担うため、1社の倒産が雇用・消費・地場取引網の連鎖に波及する。連鎖倒産の古典的なメカニズムは、今なお現役である。ここでの教訓は、個社の「価格・人手・資金」の最適化を進めると同時に、取引関係全体でのサイト是正・共同購買・共同配送などのサプライネットワーク再設計が必要、という点である。

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