
企業倒産1万件超・前年比3%増―2025-2035の「価格×人手×資金繰り」三重苦を乗り切る設計図
政策提言:感情論を排した最適解
提言は「データ→要因→影響→対策」の順で設計する。目的は、(1)価格の正常化、(2)人材の獲得・定着、(3)資金繰りの安定化、の三点である。財源は既存支出の組替と、行動変容を促す課税・規律の強化で確保する。
提言1:価格転嫁の制度化—標準原価様式と自動改定条項
・政策内容:原材料・エネルギー・賃金の主要指数(CPI/PPI/賃金指数)に連動した「自動価格改定条項」を標準契約に組み込み、見積書に「労務・間接費・利益」の内訳を共通様式で記載することを取引慣行として普及。公取委・中小企業庁の「価格交渉の指針」を一段階強化し、指数連動の不当拒否に対する是正勧告の実効性を高める。
・エビデンス:指数連動は公共工事や公益料金で実装され、費用変動の遅延を縮小する効果が確認されている。B2Bでも適用範囲を広げれば、粗利率のボラティリティを低減できる。
・財源:行政コストは限定的。周知・監督の体制強化に年数十億円規模を配分(既存の中企庁・公取委の広報・監視経費を振替)。中小の見積内訳支援にはIT導入補助の一部を原価可視化モジュールへ重点化。
提言2:人材の「定着」を軸に—スキル基準賃金と副業マッチングの制度整備
・政策内容:職務記述書(ジョブディスクリプション)とスキル基準に基づく賃金テーブルの整備を支援し、賃上げを価格に組み込む「賃金—価格の連立」を作る。加えて、地域副業・リモートの兼業マッチング(バックオフィス、設計、データ分析等)の公的プラットフォームを拡充。採用のフルタイム依存を緩め、稼働の平準化でBEPを下げる。
・エビデンス:OECDの中小企業調査では、ジョブ型の導入とリスキリングが離職率低下と生産性向上に相関。日本の中小白書でも、人材育成投資を行う企業の売上・粗利の伸びが相対的に高い傾向が示される。
・財源:既存の人材開発支援助成金、IT導入補助の「人材設計」枠へ再配分(概算:数百億円)。副業マッチングは官民連携で、成功報酬型(手数料)で運営コストを賄う。
提言3:資金繰りの再設計—回転期間KPIと早期是正の金融インセンティブ
・政策内容:与信審査に「CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)」を組み込む。売掛回転・在庫回転・買掛回転のKPI改善を条件に利率優遇を付与する「回転KPI連動ローン」を政策金融、公庫、地域金融で展開。加えて、支払サイト短縮の合意にインセンティブ税制(中小への早期支払割引を損金算入しやすくする)を設計。
・エビデンス:国際研究ではCCCの短縮が倒産確率の低下に相関。支払サイト短縮はサプライチェーン全体の運転資本を削減し、景気変動に対する耐性を高める。
・財源:利子補給・保証料減免を限定的・成果連動で(数百億円規模)。既存の信用保証制度の「延命型」から「改善型」への再設計で原資を捻出。
提言4:再生と退出の両利き—地域再生ファンドと事業引継ぎ
・政策内容:過剰債務の早期リストラクチャリング(DDS/ DES等)を地域ファンドが主導し、事業の核を残す「スリム再生」を迅速化。後継者難の企業には事業引継ぎ支援(M&A仲介の手数料補助ではなく、デューデリ費用の補助)を強化。
・エビデンス:事業再生の早期化は雇用維持率を高める。後継ぎM&Aは継続率と生産性に寄与する実証が蓄積。
・財源:既存の地域活性化ファンドや事業承継補助の束ね直しで数百億円規模。損失補填ではなく「デューデリ+KPI連動」の成功払いに限定。
財源の全体像(概算・レンジ):横断的な再配分で年0.3〜0.6兆円を確保(中小向け補助・信用保証の非効率部分の削減、デジタル投資枠の重点化)。加えて、遅延支払い・不当な価格据置に対する課徴金の創設(行動変容目的、年数十億円規模)を検討。新税ではなく「既存支出の質の改善」を基本とする。













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