
ニセ社長詐欺が急増――中小企業が今すぐできる会社を守る5つの仕組み
倫理と課題:革新の裏側にあるリスク
制度を強化すると、監査ログやDLPによる可視化が進む。これは従業員のプライバシーに関わり、監視社会化の懸念を生む。倫理的に重要なのは「目的限定性」と「最小権限」である。監視は不正検知と法令順守に限定し、評価・査定への転用を禁じる。監査対象も“支払い・口座・高リスク領域”に絞り、それ以外は集計しない設計を貫く。
雇用への影響は、バックオフィスの作業が“手続き執行”から“制度設計・監督”へと質的にシフトする点に表れる。承認はボタンを押す行為ではなく、リスクを解釈する行為になる。教育投資なしに制度だけを重くすれば、現場は疲弊し、抜け道が常態化する。制度と人材育成は同時に進めなければならない。
また、過度な「チャネルの禁止」は影のIT(シャドーIT)を生み、かえって攻撃面を広げる。禁止ではなく、正規の代替を提供し、責任の所在とログの残る経路に誘導する。セキュリティは“できない”の連続ではなく、“できるが記録される”でなければならない。

提言と未来:AIと共存する社会へ
今後5年、攻撃は「声」と「映像」を巻き込み、役員の声紋や会議映像を取り込みながら、リアルタイムに“至急の意思決定”を迫るだろう。したがって企業は、(1)音声・映像での指示は無効とする、(2)高額の意思決定にはフリクション(冷却期間・多段承認)を入れる、(3)支払い元口座からの“逆トランザクション通知”を自動化するといった、運用上の防波堤を厚くするべきである。
10年スパンでは、取引先識別子(企業ID)と請求書の相互検証、銀行APIによる即時の口座正当性確認、電子署名の普及、そして「デジタル本人性」を核にしたビジネスコミュニケーションの標準化が進む。重要なのは、どれほど技術が進んでも「最終的な資金移動は制度に従う」という原理を手放さないことだ。制度は変化に耐える。人の注意力は耐えない。
最後に経営者に伝えたい。あなたの名前は資産であり、同時に攻撃面でもある。ゆえに、あなた自身が最初の“例外の放棄者”でなければならない。社長の一声で制度を飛び越えないという文化は、会社の最も強い防御となる。損失回避の心理は組織文化に翻訳されて初めて、継続的な効果を生む。
出典:https://www.fnn.jp/articles/-/988785?display=full
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(文・加藤 悠)













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