輸出入が“突然止まる日”に備えよ:政治リスクで供給網が急停止する前の損失回避術

本質:権力構造と“切られるスイッチ”の読み方

貿易の骨は、自社だけで決まりません。政治権力、海運アライアンス、再保険、決済インフラ、通関システム、世論。誰もが「安全」を理由にスイッチを切れる構造です。批判ではありません。構造です。だから社長は、そのスイッチが切られる順番を読んでおくべきです。

順番は概ねこうです。第一に保険料と寄港判断。第二に決済・為替規制。第三に通関・輸出管理。第四に世論です。市場と現場のオペレーターが先に動き、政治が後から追いかけ、結果として「急停止」になります。

光はどこにあるのでしょうか。平時に構造を見抜き、自社で操作できるスイッチを増やすことです。契約雛形、代替港の事前承認、決済切替手順、サーチャージ自動発動条項、輸出管理の自己審査プロトコル。これはシステム投資というより、社長の意思です。

「政治は風で、企業は帆です。風は止められませんが、帆の張り方は設計できます。」

損失回避に効く実務テーブル(決済・物流・契約・在庫・コンプラ)

損失回避に効く実務コンボを整理します。どれか一つで万能にはなりません。組み合わせが骨格を強くします。

領域選択肢長所短所組み合わせ例
決済L/C・T/T・エスクロー・スタンバイL/C信用・スピード・保全のバランス手数料・柔軟性不足L/C+エスクロー、T/T前払+貨物保険強化
物流複数船社・代替港・航空/鉄道・複数フォワーダー停止時の迂回可能性平時コスト増・運用複雑海上+鉄道のマルチモーダル設計
契約不可抗力条項・価格調整条項・再輸出禁止紛争時のダメージコントロール交渉負荷不可抗力+サーチャージ自動発動条項
サプライデュアルソーシング・地理分散・戦略在庫供給途絶の緩和原価増・管理負担主要部品のみデュアル+在庫分散
コンプラスクリーニング・誓約・監査権制裁/輸出管理違反リスクの低減導入運用コスト出荷前スクリーニング+定期監査

輸出入の“止まり方”タイムライン(社長が見る順番)

  • Day 0:地政学イベントが報道されます。SNSが過熱します。
  • Day 1-3:船社・保険の条件が変わり、寄港が中止されます。保険料が上がります。
  • Day 3-7:決済が遅延し、為替規制が出ます。信用状発行にも支障が出ます。
  • Week 2-4:通関が厳格化し、追加書類が増えます。再輸出監視が強化されます。
  • Month 1-3:制裁範囲が拡大し、二次制裁リスクが高まります。物流ルートを組み替える必要が出ます。

対策は逆順に準備しても間に合いません。最初に動く領域(保険・寄港・決済)から手当てするのが損失回避の作法です。

社長向けチェックリスト(損失回避エディション)

  • 決済:銀行・通貨・手段の二系統を、即時切替できる状態にしていますか。
  • 物流:代替港・代替航路の見積もり、与信枠、社内承認を先に終えていますか。
  • 契約:不可抗力・制裁対応・価格調整(サーチャージ)条項を雛形で標準実装していますか。
  • 在庫:主要品目の戦略在庫を、計算根拠付きで役員会承認していますか。
  • コンプラ:スクリーニング運用ログを残し、監査可能な形にしていますか。

関連記事一覧

  1. この記事へのコメントはありません。