じゃがいも高騰「平年比1.5倍」が示す──中小企業の原材料高に負けない「仕入れ×価格転嫁」5つの打ち手と制度設計


解決策の提示:制度設計と現場の打ち手

粗利の毀損を即時に止める5つの打ち手を提示する。優先順位は、(1)仕入れと工程の即応、(2)価格の段階的改定、(3)中期の契約・メニュー設計の恒常化、である。

打ち手1:仕入れの分散と規格外の体系的活用

産地分散(北海道依存の緩和)と、規格外(小玉・不揃い)の用途別受け入れを同時に進める。用途別の「原単位表」を作成し、規格外はマッシュ系・煮崩れ許容系に限定する。配送効率を確保するため、規格外のみの便を避け、他品目と混載で運ぶ。これにより、生芋単価の上振れを5〜10%吸収できる余地がある。

カテゴリ用途受入規格期待効果
規格外(小玉)ポテサラ/コロッケ/グラタンサイズ不問、腐敗・緑化NG単価▲5〜8%、歩留まり▲2pt
標準品フライドポテトL/均一、糖度管理品質維持、クレーム低減
冷凍カットピーク時間の基盤規格統一、在庫回転重視人時生産性+10〜20%
表3:用途別・受け入れポリシー設計(概念設計)

打ち手2:指数連動・数量スライド条項の導入(仕入れ×販売の同期化)

仕入れ価格を基準指数(例:東京都中央卸売市場の月間平均、卸売物価指数WPIの野菜項目等)に連動させ、一定の閾値(±10%など)を超えた場合に自動で仕入れ単価を調整する。販売側も同一指数に対し、価格改定の階段式ルールを設定する。顧客には「指数レンジ内は据置、レンジ外は±X円」と事前告知し、改定の透明性を担保する。

項目ルール例効果
仕入れ指数中央卸売市場の月間平均価格(kg)主観排除、交渉コスト削減
連動閾値±10%超で自動改定微小変動の吸収、改定回数の抑制
販売価格指数±10%毎に±30円/商品段階的(ステップ)で顧客の受容性向上
告知メニュー端に指数連動方針を明記理解促進、クレーム削減
表4:指数連動・階段式価格改定の実務ルール例。

「値付けを“交渉”から“ルール”へ」

打ち手3:メニュー原単位の再設計(量目・規格・調理工程)

小型化による皮むきロスを前提に、量目とカット規格を見直す。フライドポテトは太さを1段階上げ、揚げ時間を二段階化し、歩留まりと作業安定性を確保する。ポテトサラダは原料の茹で塩分とマヨネーズ配合比を微調整し、じゃがいも比率を▲5%とする一方、具材(季節野菜)の比率で季節性を演出する。味覚の恒常性バイアスを考慮し、塩分・酸味・食感のトライアングルで満足度を維持する。

メニュー変更点原価効果品質対策
フライドポテト太さ+1mm、二段揚げ歩留まり+2pt外カリ中ホク、提供時間明記
ポテトサラダじゃが比率▲5%、具材+原価▲3〜4%塩分/酸味調整で満足度維持
コロッケ重量▲5g、パン粉粗め原価▲3%、見た目維持空隙増で食感向上
表5:メニュー原単位の再設計例。

打ち手4:在庫と工程の分離—「生芋」から「半製品」への一部切替

ピーク時間帯のボトルネックは人時生産性である。皮むき・カット・下茹でなど前工程を外部化(半製品・冷凍)し、店内は最終加熱・仕上げに集中する。月間の人件費と廃棄率を合わせた総原価で評価し、半製品比率を30〜50%へ引き上げる。これにより、原材料単価上昇を人件費削減で相殺し、粗利を2〜3ポイント回復できるケースがある。

打ち手5:価格コミュニケーション—「指数レンジ」と「代替提案」

顧客の損失回避バイアスに対しては、損失の回避ではなく「選択肢の提示」が有効である。メニューに「今月の原料指数」「代替提案(季節の根菜フライ等)」を併記し、価格改定が合理的であることを可視化する。同時に、セット販売で「客単価は維持・原価率は低下」を実現する。


次に、これら打ち手の粗利インパクトを簡易試算する。

施策粗利改善見込み主要前提
規格外活用(用途限定)+0.5〜1.0pt単価▲5〜8%、歩留まり▲2pt
指数連動・階段式改定+1.0〜2.0pt販売価格+2〜4%、顧客離反小
原単位再設計+0.5〜1.5pt量目・配合・工程最適
半製品への切替+1.0〜2.0pt人件費▲5〜10%
コミュニケーション施策+0.3〜0.8ptセット化・代替提案
表6:打ち手別・粗利改善のレンジ(概算)

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