人手不足でも電話が回る会社へ――AI電話応対“24時間一次受付”の現実解

現場・実装の視点:その他におけるDXのリアル

導入の勘所は、「音声AIの導入」ではなく「問い合わせ動線の再設計」にある。番号体系、ガイダンス文言、本人確認の閾値、転送先のスキルベースルーティング、FAQの更新責任、評価指標の定義を、電話を起点に再統合する。裏側のデータ連携では、CRM/住民情報系との境界にガードレールを引き、AIの参照範囲を最小権限で設計する。

失うリスクを先に見よ、というのが筆者の立場である。導入を先送りにした組織が失うのは、新規システムの出費だけではない。つながらない電話による市民不満、職員の離職、属人化の固定化、監査負荷の増大——これは損失回避の観点で見れば、機会損失ではなく「確定損失」に近い。AI一次受付は、最小限の仕様から着手し、失敗コストを限定しながら効果を増幅できる稀有な投資である。

実装のステップは次の通りである。1) 現行通話ログの粒度評価とKPI仮説、2) ナレッジの棚卸し(FAQ、条例、手続き手順)、3) 音声デザイン(話速、間、再確認の頻度)、4) ハンドオフ設計(閾値、キーワード、要約添付)、5) セキュリティとプライバシー(録音・保存・匿名化)、6) パイロット運用(1〜2月の繁忙前後でA/B比較)、7) 改善と拡張(多言語、時間外強化)。

組織規模同時通話規模(例)初期費用(例)月額運用(例)主要コスト要因
小規模部門1〜3回線50〜150万円10〜30万円番号・PBX連携、FAQ構築
中規模(課〜局)5〜15回線200〜600万円50〜150万円CRM連携、評価運用
全庁・全社30回線以上1,000万円〜300万円〜冗長化、監査、SLA
表4:導入コストの目安(概算・試算)

AIが受け持つのは受電の起点であり、人の仕事は案件の判断・合意形成・例外処理に寄る。AIに任せるほど、人の仕事の難度は上がるが、満足度と価値も上がる。

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