東京・赤坂の交差点で車6台の事故・6人搬送 ”信号無視”

【Q&A】深層解説

Q. 「信号無視が原因」なら個人の問題では?

A. 結論から言えば、個人の責任は逃れられない。ただし、そこで思考停止すると再発防止にならない。黄信号の設定、交差点の見通し、右折専用矢印の有無、監視カメラの抑止効果、事業者の運行管理、保険のインセンティブ──「事故を起こさせない都市設計」に切り替えない限り、同型の事故は繰り返される。個人責任は「最後の砦」であって、唯一の防波堤ではない。

Q. 交差点に監視カメラを増やすべき?プライバシーは?

A. 抑止効果は期待できるという研究や運用例は多い一方、プライバシーや誤作動対応が課題だ。現実的には、事故多発地点から段階的に導入し、運用・透明性・データの保持期間を明確にするのが妥当だろう。監視を嫌うなら、代替の安全投資(信号最適化、交通静穏化、歩車分離など)に本気の予算を投じる必要がある。

Q. タクシーの乗客として、今日からできる具体策は?

  • 乗車時に後部座席のシートベルトを必ず着用する(事故時の致傷リスクが大幅に変わる)。
  • 「急いで」の一言を控える。到着時刻よりも安全優先の意思表示をする。
  • 信号直前でのスマホ通話や話しかけは避け、運転に集中できる環境をつくる。
  • 気になる運転挙動があれば丁寧に伝える。事業者の窓口やアプリのフィードバックも活用。

Q. 事業者は「売上を落とさずに」安全を高められる?

A. 可能だ。テレマティクス(急加減速・信号遵守のデータ)とドラレコを用い、安全スコア連動の報酬を設計する。ヒヤリ・ハット報告を評価に加点し、重大事故ゼロの班にインセンティブをつける。アルゴリズムは「速さ」だけでなく「慎重さ」にも点数を配るべきだ。安全はコストではなく、競争優位の源泉になり得る。


本質の分析:権力構造の闇と光

事故は一瞬、権力は常時。交差点をめぐる力学は、次の三層で見える。

  • 運用の権力(警察・自治体):信号サイクル、取締りの重点、カメラ設置は「政治的決定」。渋滞苦情に弱い政治は、安全投資を後回しにしがちだという見方もできる。
  • 産業の権力(事業者・プラットフォーム):KPIは現場の行動を決める。稼働率・応答率・到着予想時刻──「速さのゲーム」は現場に無言の圧力をかける。
  • データの権力(保険・テック):ドライバーの挙動データは安全の金脈であり、同時に監視のリスクでもある。設計次第で、社会は安全にも不自由にもなり得る。

明るいニュースもある。世界各地で、歩車分離LPi(Leading Pedestrian Interval)右折矢印の最適化交通静穏化などの施策が積み上がり、交差点の重大事故は減らせるとされる。日本でも、自治体と警察、事業者が「安全のKPI」を共有し、可視化すべきだ。毎月の記者会見で、渋滞指数と同じ熱量で「交差点の安全指数」を発表する──それくらいの政治ショーがあっていい。

キラーフレーズ:「速い街は儲かる。だが、安全な街は続く。」

宇野 健介

メディアの役割も問いたい。「信号無視」で終わらせるなら、次の現場で同じカメラを回す準備をしているのと同じだ。原因を語るのではなく、構造を可視化せよ。それが報道の矜持であり、市民のいのちを救う近道だ。

ステークホルダー現在の行動(一般的)望ましい次の一手
自治体・警察事故後の対策、点的導入高リスク交差点のパッケージ改善、データ公開型PDCA
タクシー・物流売上KPI中心、ドラレコ装備安全スコア連動の報酬、休憩義務の実効性確保
保険会社事故後の査定・料率調整予防連動型の料率、リアルタイム警告の提供
市民・利用者ニュース消費、怒りの共有後部座席の着用、ヒヤリ地点の通報、選挙で安全を争点化

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