
物価高下で効く「赤字は広告費」戦略――10円セールと1万円ママチャリの経済学
解決策の提示:KPI設計と運用プロトコル
中小小売が再現可能にするには、プロセスを「設計→告知→実行→回収→学習」に分解し、各段階でKPIと閾値を置く。以下に実装ロードマップとダッシュボード例を示す。
1. 実装ロードマップ(4週間スプリント)
| 週 | タスク | 成果物 | KPI/閾値 |
|---|---|---|---|
| W1 設計 | SKU選定、数量・価格設定、粗利回収線の建付け、動線設計 | SKUリスト、在庫・発注計画、動線図 | 赤字上限(例:売上の0.8%) |
| W2 告知 | チラシ・SNS・アプリPUSH、近隣告知、整理券方式決定 | 告知物、混雑管理計画 | 到達数/開封率/PV |
| W3 実行 | 当日運用、行列・安全管理、クロスMD・試食・デモ | 当日オペ手順書、現場KPIログ | Traffic、Dwell Time、Attachment Rate |
| W4 回収・学習 | 売上・粗利・在庫検証、再来店分析、次回計画修正 | レポート、ABテスト計画 | 粗利回収率≧100% |
2. ダッシュボード指標と計算式
| 指標 | 定義 | 目標値 | 備考 |
|---|---|---|---|
| Traffic | 当日来店者数 | 平日比+150% | 天候補正 |
| Take-up Rate | 目玉参加者比率 | 30~50% | 整理券数で管理 |
| Attachment Rate | 関連商品購入比率 | 60%以上 | クロスMD設計で改善 |
| ATV | 平均バスケット | 1,800~2,300円 | 惣菜・精肉の牽引 |
| GM%/GM額 | 粗利率/額 | GM回収率≧100% | 赤字=広告費の完全回収 |
| Repeat Rate | 2週以内再来店 | 25%以上 | 会員化で追跡 |
CRM未整備の店でも、整理券の番号と会計レシートの紐付けで最低限の可視化は可能である。アプリが無ければレシートクーポンと簡易アンケートで代替する。
3. 施策別の比較表:どれを採るべきか
| 施策 | 目的機能 | 集客強度 | 回収メカニズム | 主KPI | 主なリスク |
|---|---|---|---|---|---|
| 10円セール(食品) | 入口強化 | 非常に高い | 補完財粗利・再来店 | Attachment/GM回収 | 混雑、安全・在庫切れ |
| 詰め放題半額(サービス) | まとめ出し促進 | 高い | 点数増で粗利額維持 | 点数/処理率 | 処理能力超過、品質 |
| 1万円自転車(耐久財) | 価格アンカー | 高い(広域) | オプション販売 | 付帯販売率 | 安全表示、在庫負担 |
4. 在庫・発注とサプライヤー連携
需要急増の先回りに、ケース単位の前倒し発注、需要予測の共有、返品条件の事前合意が不可欠である。協力の見返りとして、通常週の棚割優遇や動向データの共有など、サプライヤーの経済合理性が立つ設計を行う。適正在庫の基準は、当日完売率80~90%、欠品時間は閉店2時間前以降を目安とする。
「供給の破綻はブランドの破綻になる」。集客に成功した日に欠品・混乱が起きると、LTVは毀損する。売り方と同じ熱量で「売らない」判断(数量・入店制限)を制度化する。

5. 数量設計の数理:どこまで赤字を許容できるか
赤字許容の上限は、月間売上に対する広告費比率(Ad/Sales)を基準に置けば運用が容易である。例えば、月商3,000万円、広告費比率1.0%と設定すると、月間広告枠は30万円。月2回の10円祭で1回あたり15万円まで赤字を許容できる。現金支出の広告費を、売場起因の赤字に置き換える発想である。
| 変数 | 定義 | 数値例 |
|---|---|---|
| S | 月間売上 | 30,000,000円 |
| α | 広告費比率 | 1.0% |
| A | 許容広告費(月) | A= S×α = 300,000円 |
| n | 開催回数/月 | 2回 |
| L_max | 1回あたり許容赤字 | L_max = A/n = 150,000円 |
実務では、赤字の1/2は当日回収、残り1/2を2週間以内の再来店で回収する二段回収モデルが安定的である。危機シナリオとしては、天候急変・競合対抗・仕入高騰。価格と数量のABテストを続け、回収率≧100%を閾値にPDCAを回す。













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