三菱UFJ銀行が導入する「AI行員を今月から導入」

現場・社会への影響:金融・投資業の損益分岐点

銀行におけるAI行員の経済効果は、「1人1日あたり節約時間 × 適用人数 × 人件費単価」で一次近似できる。加えて、誤記・再作成の減少、与信の早期警戒、オペリスク損の抑制といった二次効果がある。ここでは、仮に三菱UFJ銀行のAI行員が主に国内の知識職2万人規模に適用されると仮定し、三つのシナリオを置く。

項目保守基本積極
対象従事者15,000人20,000人25,000人
1人当たり節約時間20分/日36分/日60分/日
労働時間換算(適用率)約5%約12%約20%
FTE削減相当750人2,400人5,000人
平均人件費(総額)1,100万円/人1,100万円/人1,100万円/人
年間効果(一次:人件費相当)約83億円約264億円約550億円
AI運用コスト(ユーザー)月1.5万円×1.5万人月2万円×2万人月2万円×2.5万人
AI運用コスト(年)約27億円約48億円約60億円
統合・監査等固定費年30億円年50億円年80億円
純効果(一次)約26億円約166億円約410億円

積み上げると、基本シナリオで年200億円規模、積極シナリオで400〜600億円規模の純効果が射程に入る。CIRの改善幅に直すと5〜8pt。もちろん、これは人員削減を前提としない。「時間配分の再設計」を通じて、顧客接点・与信の質・付加価値業務への再集中が達成できるかが分岐点である。経営課題は「浮いた時間」を戦略業務に再配賦するガバナンスである。

AIはコストを削る刃ではない。滞留する時間を資本化し、収益へ変換するパイプラインである。

松永 渉

投資家にとっては、AI行員のKPIは「ログイン率」や「プロンプト回数」ではない。時間短縮の実測(タスク単位)・再配賦の実効(営業行動指標)・リスク指標の改善(早期警戒精度)である。ここがIRで定量開示され始めた企業は、株式市場で「実装力のプレミアム」を獲得するだろう。

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