不祥事コストは「制度の欠損」から生まれる──コンダクトリスクを最小化する7つの仕組み

解説・執筆:石垣 隆(経済政策アナリスト / 元経済紙論説委員)

【30秒で把握】経済視点で見るニュースの本質

  • 統計事実:懲戒2件、腕立て計約1,900回・115点窃盗が顕在化(※一次情報は本記事最末尾を参照)
  • 構造課題:権限集中と牽制欠如、通報・一次対応の制度空洞化が誘発
  • 石垣の提言:社長主導で7つの統制を90日導入、コンダクト損失を半減

結論は明快だ。不祥事は「個人の資質」より「制度の欠陥」で説明できる。今回の体罰・窃盗事案は、どの組織でも起こり得るコンダクトリスクである。経営が整えるべきは、行動規範・権限牽制・通報・一次対応・教育・監査・危機プロトコルの7仕組みである。損失回避の観点からは、90日で最低ラインを敷くことが最適解である。

目次

導入部:数字で読み解くニュースの全貌

北海道の高校野球部での体罰(腕立て伏せ約400回、連帯で約300回×5人、もも上げジャンプ最大約500回)と、無人販売店からの115点窃盗による懲戒事案は、性質が異なるように見えて、同じ構造的欠陥に由来する。すなわち「権限の一極集中」「牽制の不在」「通報と初動の遅れ」である。経営学・制度設計の視点では、これはオペレーショナルリスクの一形態(コンダクトリスク)であり、放置すれば再発確率は逓増し、損失分布は厚い裾(テール)を持つ。損失回避の合理的経営は、テールを削る仕組みを先に敷くことである。

「不祥事は人を責めても減らない。制度で減らす」

経営層が取るべき行動は三つに集約される。第一に「規範の言語化と閾値の明示」。第二に「権限の分散と牽制」。第三に「通報・初動・記録の標準化」である。これらは人的資本・レピュテーション・規制遵守の三領域で同時に効く。投入コストは概ね人件費換算で0.1〜0.3%(※モデル試算)であり、想定削減損失は単年度でその2〜5倍に達する。投資対効果は明確である。

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