「情報持ち出し」なぜ止められないのか――ゼロトラストと委託統治で守る顧客信頼の設計図9つ

提言と未来:AIと共存する社会へ

本稿の出発点は、出向先からの情報持ち出しという現実の痛点である。結論は明快だ。人に依存した「禁止」ではなく、制度と技術で「不可能化」する。ゼロトラスト、DLP、VDI、委託統治、AIゲートウェイ。これらは単なる製品ではなく、業務設計のレイヤーである。導入順序と運用の質が、投資対効果の差を決定づける。

5年後(2030年)を見据えれば、データセキュリティは三つの基盤に収斂する。第一に、DSPM/DDRによる「データ在庫の常時棚卸」。第二に、ポリシー・アズ・コードと連続監査で、契約の遵守を自動検証する世界。第三に、機密計算(Confidential Computing)やフェデレーテッド学習で、「データは動かず、モデルが移動する」標準化だ。販売はAPI連携と共同KPIで再構築され、出向は例外的手段となる。

10年後(2035年)には、個人データは個人の管理下(PDS/スマートウォレット)に戻り、企業は「許諾に基づく一時利用」の形で関与するだろう。保険はパーソナライズの極みに近づくが、逆に言えば「許諾を失う企業」に市場の居場所はない。信頼は最大の差別化要因であり、「守れない情報は、いずれ扱う資格を失う」という厳しい現実が訪れる。

最後に、失うものを直視したい。統制を先送りすれば、失うのは顧客だけではない。人材、提携、ブランド、そして意思決定の速度だ。損失回避の心理に従うなら、今こそ最初の90日を動かすべきである。「信頼は製品でなく、設計と習慣で作られる。」 それが本稿のメッセージである。

参考・出典

  • 出典:対象ニュース・関連資料
  • 参考:独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)「情報セキュリティ10大脅威」
  • 参考:NIST SP 800-53 / 800-171(アクセス制御・監査・委託管理のガイドライン)
  • 参考:ISO/IEC 27001(情報セキュリティマネジメント)

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(文・加藤 悠)

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