退職は「終わり」ではない──10歳警察犬の退官式に学ぶ中小企業のオフボーディングガイド

解説・執筆:白石 亜美(実践キャリア解説者 / 元ビジネス誌編集長)

  • トレンド(事実):「第二の人生」を制度で支える動きが広がる
  • ギャップ(課題):退職=損失という発想が慣性で残っている
  • アクション(白石の提言):感謝・移管・再会の三点セットを整える

「退職は裏切りではない」。そう言い切れる会社は、どれくらいあるでしょう。警視庁のベテラン警察犬・オトの“退官式”は、役割を終える者に敬意を払い、新たな生活へエスコートする文化の大切さを教えてくれます。人も組織も、別れ方で未来が変わるのです。この記事では、中小企業こそ取り入れたいオフボーディングの実践を、明日から動けるレベルで解説します。

目次

変わりゆくルールの現在地──“退官式”が示したこと

東京・東大和市の訓練所で、黒いラブラドール・レトリバーの警察犬「オト」は、静かに役目を終えました。薬物・銃の捜索で幾度も現場に貢献してきた大ベテラン。嗅覚に陰りが見えた今、警視庁は史上初の“退官式”を行い、オトに正式な「卒業」を贈りました。その姿を見守ったのは、かつての相棒であり、今は迎え入れる家族。引退後のオトは、指示待ちのまなざしから、次第に家族の一員の穏やかな表情へ──関係性は「上司と部下」から「家族」へと再定義されました。

この物語は、私たちの企業社会にもそのまま重なります。退職する人を「備品の返却」とだけ捉えるのか。それとも、敬意を持って送り出し、新しい場所での活躍を応援し、いつかまた交差する未来を設計するのか。別れ方の設計=オフボーディングは、採用力・ブランド力・知の循環に直結する〈経営の技〉なのです。

「退職の質は、採用の質を決める。別れ方で組織の教養が試される。」

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