賃上げしないと人が消える。春闘5%時代に製造業が失うもの/守るもの

現状分析:賃上げの経済的定義と不都合な真実

「春闘」とは?経済的定義

春闘は、日本の賃金決定メカニズムにおける協調的交渉の季節的集中です。経済的には「賃金のナショナル・アンカー(係留点)」として機能し、価格設定や人件費見通しに期待形成効果を持ちます。名目賃金上昇率は、分解すれば「価格転嫁(名目付加価値)」「労働生産性」「労働分配率」の和で表現できます。持続可能性は、この分解式の安定性に依存します。

製造業では、賃金決定はサプライチェーンの階層構造に規定されます。したがって、春闘の成果が裾野まで波及するには、労使交渉だけでなく「取引慣行の制度設計」が不可欠です。具体の型は、指数連動(原価連動)モデル契約の雛形(内部リンク)で整理しています。

データが示す「不都合な真実」

主要データは以下の通りです。一次情報(官公庁・公的統計・団体公表値)を優先し、推計は※で明示します。

指標直近含意出典
春闘・賃上げ率(加重平均)5%超期待形成は前向き連合:春季生活闘争
消費者物価(CPI)2%台(※時点)実質賃金の回復を圧迫総務省統計局:消費者物価指数
雇用・求人(製造含む)逼迫(※)賃金の下方硬直が強まる厚生労働省:一般職業紹介状況
価格転嫁の実態改善途上賃上げ原資が毀損公正取引委員会 / 中小企業庁

整理すると、「賃上げ率の統計」は前向き、「実質賃金」は物価で相殺されやすく、「価格転嫁」は不十分になりがち、という三層構図が見えます。つまり、名目賃上げを続けるには、価格転嫁と生産性の双方を制度化する必要があります。

「賃金=付加価値×労働分配率÷従業員数」。式は単純ですが、持続性は価格転嫁と生産性の設計で決まります。

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