社長室をやめたら、現場が回り出した—『隣に町長』に学ぶ中小企業のオフィス改革3ステップ

課題と背景

「フリーアドレス」とは?

フリーアドレスは、固定の自席を持たず、仕事の内容やコラボ相手に応じて座る場所を選ぶ運用です。狙いは、部署内外の会話を増やし、情報の偏りと待ち時間を減らすこと。実はこの設計は、MITのトーマス・アレンが提唱した「アレン曲線」の示唆(物理距離が近いほどコミュニケーション頻度が上がる)とも整合します。距離を詰めると、意見も近づく。ここに、文化が変わる余地があるのです。

ただし、机を動かせば勝手に成果が出るわけではありません。座席管理、機密管理、チームの同期、オンボーディングといった“運用の骨”が必要です。心理的安全性の研究で知られるエイミー・エドモンドソンが示すように、率直に話せる場があって初めて学習が進みます。つまり、席の自由と心理の自由はセットで設計しましょう。

用語意味運用の要点
フリーアドレス固定席を持たず、自由に席を選ぶゾーニング、座席予約、電源・Wi-Fi、簡易ロッカー
アクティビティ・ベースド・ワーキング(ABW)作業の種類に合わせて場を選ぶ集中・協働・通話・休憩の明確な区分とサイン
ホテリング予約制の一時利用席混雑予測、予約ルール、優先利用の透明性
ネイバーフッドチームや機能単位のゆるやかな“縄張り”固定化を避けつつ、合流しやすい集積を作る

データで見る「個人の悩み・企業の壁」

現場の生の声は概ね共通しています。個人は「話しかけづらい」「集中が途切れる」。企業は「情報管理が怖い」「評価が難しい」。ここでは制度の違いと、運用の打ち手を一覧にしました。精神論にせず、仕組みで支えるのがコツです。

視点よくある悩み原因(構造)有効な対策
個人上司に話しかけづらい権威距離、偶発接触の少なさリーダーの“隣席日”、カジュアル1on1、朝会3分
個人集中できないゾーニング不十分、通知過多集中席の設定と可視サイン、通知の時間割
個人席探しが面倒席の可視性不足座席予約アプリ、混雑ヒートマップ掲示
企業機密が心配装置認証、画面覗き見、会話漏えいゼロトラスト端末、プライバシーフィルタ、機微会話ブース
企業評価が曖昧行動基準の未定義成果+行動KPIの二軸、週次レビュー
企業チームの一体感が希薄集合機会の設計不足曜日固定の同席日、全体デイの儀式化

重要なのは、評価制度より先に“距離”を整える順番。距離が縮まると会話が増え、期待と基準が生で伝わり、評価議論が現実味を帯びます。逆は難しい。だからこそ、磐梯町の「隣席」から学ぶ価値があるのです。

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