
「都合のいい数字」に乗らない社長の統計チェック3点
解決策:統計校閲・比較基準・可視化規約の導入手順

選挙期の統計報道は、属人的なスキルに頼らず、プロセスで品質を担保した方が再現性が高いです。ここでは、メディア・出版業がすぐ導入できる制度設計をまとめます。
1)統計校閲(Statistical Copyediting)を必須化します
- 母数・定義・期間・基準年・季節調整の5点チェックを記事要件に組み込みます。
- 対立する代替指標を最低1つ併記します(例:名目/実質、平均/中央値、失業率/就業率)。
- 数値は一次情報にさかのぼり、出典と更新日時を脚注化します。
| チェック項目 | 要件 | 記事内の表記例 |
|---|---|---|
| 母数 | 分母を明記します | 「労働力人口を分母とする失業率です」 |
| 定義 | 採用定義を説明します | 「実質賃金=名目賃金÷CPIです」 |
| 期間 | 比較期間を明示します | 「直近12カ月平均(前年同月比)です」 |
| 基準年 | 指数の基準年を示します | 「2015年=100です」 |
| 季節調整 | 調整の有無を明記します | 「季節調整値です」 |
2)比較基準を固定して、論点をぶれさせないようにします
- 選挙報道用スタイルガイドを作り、主要指標の優先軸を固定します(例:賃金は実質、所得は中央値を優先します)。
- 基準年・比較期間を一貫させます(例:公約比較は直近3年移動平均を採用して端点効果を抑えます)。
- データ更新ログ(改定履歴)を残し、更新時刻も併記します。
3)可視化規約(Visual Integrity Policy)を決めます
- 縦軸ゼロ起点、対数軸は明示、カットオフやスムージングの注記を必須にします。
- 二軸グラフは相関誘導リスクが高いので、可能なら単軸に分解し、相関と因果の違いを明記します。
- インフォグラフィックは比較軸を1つにし、複合評価は表へ分解します。
4)訂正・追記ポリシーを見える化します
- 訂正はページ上部にタイムスタンプで掲示し、旧版はアーカイブリンクで保持します。
- 重大な誤解誘導はSNSでも訂正配信し、対応SLA(例:24時間以内)を掲示します。
- 選挙期間中は第三者ファクトチェック機関との連携も検討します。
外部リンク(一次情報):厚生労働省「毎月勤労統計調査」、総務省統計局「労働力調査」
5)データ・プレイブック(社内運用台帳)を標準化します
主要指標ごとに、定義・算式・母数・一次出典・更新頻度・例外を台帳化し、記事側から参照できるようにします。これだけで「言い方が毎回変わる」問題が減ります。
| 指標 | 定義・算式 | 母数 | 出典(一次) | 更新頻度 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 実質賃金 | 名目賃金÷CPI | 現金給与総額 | 厚労省「毎月勤労統計」 | 月次 | 名目も併記します |
| 失業率 | 失業者÷労働力人口 | 労働力人口 | 総務省「労働力調査」 | 月次 | 就業率・参加率も併記します |
| 1人当たりGDP | GDP÷人口(PPP) | 人口 | OECD / World Bank | 年次 | 名目との違いを明記します |
| ジニ係数 | 不平等度指標 | 世帯数 | 厚労省「国民生活基礎調査」 | 隔年 | 再分配前後を併記します |
6)レッドチーム(反証班)で「主張→根拠→限界」をログ化します
- 重要特集は外部の統計専門家も含めて反証レビューを行い、反事例を提示します。
- 記事の主張は「アサーション(主張)→エビデンス→限界」をセットで残します。
- 誤差範囲・有意性が不明な場合は断定を避ける運用にします。
7)KPIで損失回避を見える化します
- 統計校閲通過率、訂正発生率、読者信頼スコア、訂正SLA遵守率を四半期で追います。
- 選挙期は「誤解誘発リスク」を事前スコアリングして、回避件数も記録します。
「社長の意思決定はスピードが命ですが、数字の前提だけは必ず確認します」















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