
東京都の不妊治療補助 新たに体外受精なども適用拡大へ
東京都の不妊治療補助「適用拡大」の家計効果:1回あたり実費2〜8万円、出生+1,000〜3,000人/年の射程
解説・執筆:松永 渉(データ政策解説者 / 元日経記者)
- 統計事実(Data):体外受精児は出生の約7%、年間6万人規模(全国)
- 構造要因(Structure):費用と年齢の二重制約が治療継続を阻害
- 未来予測(Forecast):補助拡大で東京の出生+1,000〜3,000人/年が見込める
40〜60万円/回の治療費が、保険適用と都の上乗せ補助で実費2〜8万円へ—。数字は冷徹であるが、家計と出生に効く。東京都が不妊治療の補助を「体外受精など」へ拡大する方針は、費用という最大の摩擦を外す政策である。本稿は制度の射程、家計の損益分岐点、追加出生の推計、そして財源設計までを、データで読み解く。
目次
- 数字が突きつける現実
- 「不妊治療・体外受精」とは?
- データで見る「乖離」—費用・成功率・家計負担
- 現場・社会への影響:世帯の損益分岐点
- 【Q&A】データ政策の論点
- 政策提言:感情論を排した最適解
- 将来予測:10年後のシナリオ
導入部:数字が突きつける現実
「東京都の不妊治療補助が新たに体外受精などへ適用拡大」という方針である。国は2022年に体外受精(IVF)等を公的医療保険の対象とした。自己負担は原則3割、総額40〜60万円/回の標準的な治療なら実負担12〜18万円に収まる。ここへ東京都が上乗せ補助を重ねれば、「1回あたりの実費2〜8万円」まで視野に入る(補助額次第)。
家計の摩擦を外す効果は出生という「最終アウトカム」に直結する。日本産科婦人科学会の集計では、体外受精などの生殖補助医療(ART)による出生は年間6万人規模、全出生の約7%に至った。治療継続を左右するのは、年齢と費用の二つの制約である。費用を下げれば治療継続率は上がり、累積出生は増える。政策の勝ち筋は明快だ。
ただし重要なのは、「どれだけ安くなるのか」を制度の細目ではなく、家計のキャッシュフローで測ることである。1回では終わらない治療を、何回、どの成功率カーブで試みるか。期待値で見た「1児あたり必要投資額」を低下させる設計でなければ、社会的費用対効果は立たない。
「費用を1回で語るな。出生1人あたりの総投資額で語れ。」
— 数字が示す政策評価の基準
「不妊治療・体外受精」とは?
不妊治療とは?
不妊治療とは、
「赤ちゃんを望んでいるのに、自然に妊娠しにくいカップルを助ける医療」です。
目安として1年間、避妊せずに夫婦生活を続けても妊娠しない場合
→ 不妊の可能性があると考えます。
原因は女性だけでなく、
- 卵子の問題
- 精子の問題
- 卵管の詰まり
- 子宮の環境
- 年齢による変化
など、男女どちらにもあります。
不妊治療のステップ(軽い→高度)
治療は「いきなり体外受精」ではなく、段階的に進みます。
① タイミング法
排卵日を予測して、
「いちばん妊娠しやすい日に合わせて性交」する方法。
→ 自然に近い。
② 人工授精(AIH)
精子を洗浄して、
排卵のタイミングで子宮に直接入れる方法。
→ 精子が子宮に届きやすくなる。
③ 体外受精(IVF)
ここで登場します。
体外受精とは?
体外受精=卵子と精子を体の外で受精させる方法
自然妊娠:
体の中(卵管)で卵子と精子が出会う
体外受精:
病院の培養室で出会わせる
という違いです。
体外受精の流れ(やさしく)
① 卵巣を刺激して、卵を育てる
↓
② 卵を体から取り出す(採卵)
↓
③ 精子と卵をシャーレの中で出会わせる
↓
④ 受精して育った胚(はい)を
子宮に戻す(胚移植)
↓
⑤ 着床すれば妊娠
不妊治療は
「命を無理やり作る医療」ではなく、 「出会いを助ける医療」です。














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