
企業倒産1万件超・前年比3%増―2025-2035の「価格×人手×資金繰り」三重苦を乗り切る設計図
解説・執筆:松永 渉(データ政策解説者 / 元日経記者)
- 統計事実(Data):倒産は前年比3%超増で「年1万件超」に達した(NHK報)
- 構造要因(Structure):物価高と人手不足、価格転嫁の遅れが同時進行
- 未来予測(Forecast):三重苦の持続で中小は選別、地域構造に波及
年1万件超、前年比3%増。数字は静かだが、その含意は重い。物価上昇、人手不足、ゼロ金利の終わりが見え始める中、価格転嫁の遅れが体力の弱い企業から蝕んでいる。失う前に守る——損失回避の観点で、10年スパンの現実的な対応策をデータで設計する。
目次
数字が突きつける現実
NHKの報道が示すとおり、倒産は「年1万件超」「前年比3%余の増加」である。これは偶発的な揺らぎではなく、構造的な潮目である可能性が高い。背景にあるのは、企業の収益式の「分子(売上)」「分母(コスト)」双方で同時に圧力が高まる三重苦だ。第一に、エネルギーや原材料価格の上昇が変動費を押し上げ、第二に、人手不足が実質賃金と採用・定着コストを高止まりさせ、第三に、低金利と緊急融資に支えられていた資金繰りの環境が「通常運転」に戻りつつある、という現実である。
重要なのは、これが「総需要の不振」による古典的な不況型倒産ではない点だ。むしろ需要は底堅い局面も多いが、価格転嫁の遅れや賃金・採用費の上昇が粗利を削り、キャッシュを枯らす「コスト・プッシュ×人手制約」型の現象である。したがって対処は、需要喚起よりも「価格・人材・資金繰りの調整機構」を再設計する方向に重心を置くべきである。
失うものは利益ではない。企業の継続可能性、地域の雇用、取引ネットワーク——社会的な「選択肢」そのものである。損失回避の設計は、短期の延命ではなく、損益分岐点の現実的な引き下げと、価格の正常化による粗利回復の両輪から出発すべきである。
「価格転嫁は“お願い”ではなく“設計”である」
コスト・プッシュ時代の経営原則













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