じゃがいも高騰「平年比1.5倍」が示す──中小企業の原材料高に負けない「仕入れ×価格転嫁」5つの打ち手と制度設計

解説・執筆:石垣 隆(経済政策アナリスト / 元経済紙論説委員)

  • 統計事実:東京都中央卸売市場の卸売価格は1kg当たり286円。平年比1.5倍へ上昇。
  • 構造課題:北海道産依存・気象リスク集中と、指数連動契約不在が価格転嫁の遅延を招く。
  • 石垣の提言:規格外活用×仕入れ分散×指数連動条項で粗利の毀損を最小化する。

BLUF:じゃがいも価格の「平年比1.5倍」は一過性ではない。気候ショックの頻度上昇と産地集中が重なり、サイズ小型化による歩留まり低下と廃棄増で実効原価は表面価格以上に上がる。飲食業は、指数連動の契約設計・規格外の体系的活用・メニュー原単位の再設計を即時に実施し、粗利3〜5ポイントの流出を止めるべきである。

目次

導入部:数字で読み解くニュースの全貌

報道が示す事実は三つである。第一に、東京都中央卸売市場でのじゃがいも卸売価格が1kg当たり286円と、平年比1.5倍へ上昇したことである。第二に、2025年夏の猛暑と少雨が北海道を直撃し、サイズが小型化したことにより、加工現場での選別ロスが増え歩留まりが悪化している。第三に、店頭価格は100g当たり税込み25円(2025年)から36円(2026年)へと上がり、「皮をむくと食べる部分が少ない」という実感的な損失を抱いている。これらは単なる価格の上昇ではなく、実効原価に作用する要因が多重に重なった「供給ショック」である。

加工メーカーでは、小芋化によりチップスのサイズが不揃いになり、規格外として廃棄される割合が増加している。生芋価格の上昇だけでなく、規格外率の上昇は投入単位当たりの可販量を減らすため、製品一袋当たりの原価は単純な1.5倍以上に膨らむ。飲食業も同様で、皮むきロスやカット歩留まりの低下、調理時間の増加(労務コスト)といった隠れ原価が粗利を圧迫する。

結論として、飲食業は「価格転嫁のための根拠を定量化し、指数連動・数量スライド条項を設ける」「規格外の受け入れ条件を再設計する」「メニューの原単位最適化と一時的な代替食材の導入」をセットで実行すべきである。制度としては、農産物流通における品質規格の柔軟化、栽培リスク分散と保険の高度化、産地集中の緩和(ポートフォリオ化)が不可欠である。

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